子ども虐待防止を呼びかける「オレンジリボン運動」の啓発イベントである「オレンジゴスペル」の全国ツアーが、10月29日から始まる。この2年間は新型コロナウイルスの影響で開けず、3年ぶりの開催。今年は7都府県9カ所を巡り、4カ所でゴスペルコンサート、5カ所で支援イベントを行う。
オレンジゴスペルの企画者である米ニューヨーク在住の音楽プロデューサー、打木希瑶子さんが来日出演するほか、米国やカナダでゴスペルアーティストとして活動するダニー・イーソンがビデオ出演。その他、国内で活躍するさまざまなアーティストが出演し、開催地の市議らが登壇するトークショーも行われる。
「合唱のように、子育てもみんなで!」がコンセプトのオレンジゴスペルが始まったのは2011年。打木さんはその7年前、当時11歳だった息子を連れて渡米。米国人男性と結婚するが、家庭内暴力(DV)被害に遭う。身寄りのない海外での思いがけない出来事で、うつ病を発症。プロデューサー業は休止せざるを得ず、一時はホームレス状態に陥った。
自殺願望に悩まされながらもカウンセリングを受け、夫との裁判を行う中、DV加害者もまた、幼少期に虐待などの被害に遭っている可能性が高いことを知ったという。DV撲滅のために立ち上がった打木さんは、国内外で講演・執筆活動を開始。日本では市民ボランティアと共にオレンジゴスペルを立ち上げた。
ツアーで巡る各地のイベントは、地元の有志が実行委員会を結成して企画しており、それぞれ出演者や内容は異なる。
ツアー初日に名古屋グレイスキリスト教会(名古屋市西区)で行われる支援イベントには、NHKにも出演経験があり盲目のアーティストとして活躍する木下航志や、2016年に米国でCDデビューした和洋混成バンド「Neo Japanesque」らが出演。東京と大阪で行う支援イベントでは、ニューヨークで長年にわたって音楽プロデューサーとして活動している打木さんが、「音楽を仕事にする」をテーマに講演する。
ゴスペルコンサートは、大阪会場では久野久美子、東京会場ではMARISAや塩谷美和、新潟会場では片桐晴海やライトハウス・バプティスト・チャーチ(新潟市)の牧師でもある Rev.Taisuke ら、国内で活躍するゴスペルアーティストが出演する。また、ニューヨークのレコードレーベル「Pure Soul Music」に所属するソウルシンガーのNobは、大阪、愛媛、東京、新潟の4会場全てに出演する。
イベントの中には、打木さんとゲストによるトークショーが行われるものもある。ゴスペルコンサートの愛媛会場では松山市の田中エリナ市議が、千葉県の支援イベントでは同県流山市の近藤みほ市議が登壇。子育てしやすい環境づくりを進め、少子化問題を食い止めるために皆で何ができるのかなどを語り合う。
イベントの参加者は、小さな子どもからシニア世代までさまざま。イベント最後に、オレンジゴスペルの応援歌となっている「Don't Give Up」を参加者全員で合唱する光景は感動的で、涙を流す人もいるという。
一方、性別で見ると、これまでの参加者は約8割が女性。「子育ては女性だけの仕事ではありません。男性の子育てへの関心度を高める必要があります」として、今年は男性の参加者増を目指している。
ツアーは、オレンジリボン運動を推進している認定NPO法人「児童虐待防止全国ネットワーク」との共催で行われ、各会場ではオレンジリボン運動の啓発グッズも配布される。
オレンジゴスペル実行委員会は、一流の音楽を楽しみ、トークショーや講演から学び、社会貢献もできるイベントだとして、多くの参加を呼びかけている。
また、賛同者からは寄付も募っており、各会場では募金箱を配布する予定。寄付は、銀行振り込みでも受け付けている。この他、年間1万円(または年間100ドル)の個人サポーターや、年間10万円の企業サポーターも募集している。
ツアーの日程や出演者、チケットの購入、サポーターについてなど詳細は、オレンジゴスペルの公式サイトを。
■ オレンジゴスペル公式PR動画