南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)政策撤廃に貢献した南部アフリカ聖公会のデズモンド・ツツ元大主教が26日、同国のケープタウンで死去した。90歳だった。同国大統領府が同日、ホームページ(英語)で発表した。
1931年、南アフリカ北部のクラークスドルプにある黒人居住区で貧しい家庭に生まれた。苦学して教師となるが、人種差別的な教育法の成立により聖職者となる。同国内で数年牧会した後、ロンドン大学キングスカレッジに留学。75年、同国最大の都市ヨハネスブルグの聖メアリー大聖堂主席司祭に任命され帰国。76年にはレソト主教となった。
アパルトヘイト政策に対する抵抗運動で積極的な役割を果たし、南アフリカ教会協議会(SACC)総幹事在任(78~85年)中の84年にノーベル平和賞を受賞。85年、黒人としては初めてヨハネスブルク主教となり、さらに翌86年には、同じく黒人としては初めて、南部アフリカ聖公会の首座主教を兼務するケープタウン大主教となった。
96年にケープタウン大主教を引退、同名誉大主教に。アパルトヘイト政策撤廃後には、人種間の和解を目指してネルソン・マンデラ政権が設立した真実和解委員会の委員長になった。その後もさまざまな社会問題に取り組み、2013年には宗教界のノーベル賞と呼ばれるテンプルトン賞を受賞した。
詳しい死因は明らかにされていないが、共同通信によると、1997年に前立腺がんと診断され、その後も入退院を繰り返していたという。