イスラエルでは13日、12年連続で政権の座にあったベンヤミン・ネタニヤフ首相が退陣し、左右両派の8党による連立政権が発足した。首相には、右派政党「ヤミナ」党首のナフタリ・ベネット氏が就任。外相には、連立交渉を主導したとされる第2党の中道政党「イェシュアティド」党首のヤイル・ラピド氏が就任した。約2年後にはラピド氏が首相に就く輪番制が取られる。イスラエルの新政権誕生に対する福音派指導者4人の反応をまとめた。
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ジョエル・ローゼンバーグ氏
ジョエル・ローゼンバーグ氏は、米国とイスラエルの二重国籍者で、近年は他の福音派指導者らと世界の政治指導者との会合に参加している福音派の著述家だ。
自身が編集長を務める「オール・イスラエル・ニュース」に掲載した論説(英語)では、キリスト教徒のイスラエルに対する愛は、「ある一人の人間に結び付いているものではなく、アブラハム契約と、イスラエルとユダヤ人を祝福せよという聖書の命令に基づいている」と指摘。イスラエルの祝福を呼び掛ける「ヨシュア基金」の設立者でもあるローゼンバーグ氏は、誰が政権を握ろうと、イスラエルを支援し祈ることを勧めている。
また、ベネット新首相とラピド新外相は、福音派と良好な関係を築くことができると楽観視し、次のように述べている。
「福音派の人々は、ベネット氏がネタニヤフ前首相の庇護を受けてきたこと、そしてネタニヤフ氏の世界観と政治哲学を共有していることをすぐに知るでしょう。また、ベネット氏が強力な右翼のタカ派であり、ネタニヤフ政権において国防相を務めたこと、イランに対する強硬な立場を共有していることも知ることになるでしょう。さらに、ネタニヤフ氏がベネット氏に、自身の政権への参加を必死に求めていたこともすぐに知ることでしょう」
ジョニー・ムーア氏
ジョニー・ムーア氏は、キリスト教指導者会議(CCL)の議長であり、米政府の独立機関「国際宗教自由委員会」の元委員。福音派のリバティー大学(バージニア州)では、広報担当役員や副学長を務めた経歴を持つ。
ムーア氏は、政治によってイスラエルとの友好関係が妨げられることのないようにし、政権が変わってもイスラエルを支持するよう助言し、声明(英語)で次のように述べている。
「米国の福音派が、イスラエルの民主主義の力を称賛することを超えてイスラエルの内政に干渉することは賢明ではありません。もしそうするのであれば、慎重かつ敬意を払って行うべきです。ほとんどの福音派の指導者たちはネタニヤフ前首相と素晴らしい友情を築いてきましたが、それは今後も続くでしょう。彼らのイスラエルとの友情は、イスラエルの政治や政党の思惑を超えたものです。福音派は、たとえ誰が首相になっても、常にイスラエルと共にあるでしょう。私たちは将来のすべてのイスラエル政府との緊密な関係を望んでいます。例えばですが、今の問題が解決すれば、私はイスラエル行きの飛行機に飛び乗るでしょう。それまで私は、見守り、祈ります」
ニッキー・ヘイリー氏
ニッキー・ヘイリー前米国連大使はイスラエルとの連帯を表明し、ベネット氏をはじめとするイスラエルの政治指導者らと会談するために、「イスラエルを支持するキリスト教徒連合」(CUFI)の創設者であるジョン・ハギー牧師と共にイスラエルを訪問した。
新政権が発足した13日には、自身のツイッター(英語)に次のように投稿した。
「イスラエルの安全保障、外交、経済に対するネタニヤフ前首相の貢献は歴史的なものです。彼は、私と夫のマイケル、そして米国にとっての友人です。彼とサラ夫人の幸せを願います。ベネット首相、就任おめでとうございます。私たちは、米国とイスラエルの否定し得ない強い絆に力を注いでいます」
ヘイリー氏は、イスラエルの政治指導者が誰であろうと、米国はイスラエルを支持すると繰り返し述べている。米フォックス・ニュースのインタビュー(英語)では、「誰がリーダーなのかは重要ではありません。重要なのは、米国がイスラエルと共にあるという意志であり、イスラエルと共にある必要性であり、そして共にいることです」と語っている。
一方、イランとの核合意復活については警告し、核合意の復活はイスラエルにとって「死を願うこと」になると述べた。ヘイリー氏は現職時代、ドナルド・トランプ前米大統領と協力して米国を核合意から離脱させたが、ジョー・バイデン米大統領は、イスラエルが反対しているイランとの核合意再締結を検討しているとされる。「私たちが起こらないように願っているのは、イランへの経済制裁を解除することで世界をより危険な場所にしてしまうことです」と訴えている。
14日には、ネタニヤフ氏、ハギー牧師と共に写った写真をツイッター(英語)に投稿し、次のように語った。「ネタニヤフ氏との時間は常にかけがえのないものです。イスラエルの安全と繁栄に対する彼の貢献は、歴史的なものです。私たちは、まだ彼から最後の言葉を聞いていません」
ジェンテゼン・フランクリン氏
フリー・チャペル(ジョージア州)の牧師であり、キリスト教シオニストでもあるジェンテゼン・フランクリン氏もまた、イスラエルの新政権を祝福した。フランクリン氏は、キリスト教コミュニティーが新政府と「友好的な関係」を築き、「ユダヤ教徒とキリスト教徒との友情の新時代」を築くことに興奮していると強調し、次のように語った。
「イスラエルが新政権を樹立したことを祝福したいと思います。そして、彼らがイスラエルの安全を確保できるよう、世界中のキリスト教徒に神の助けを祈り求めるよう呼び掛けます」
「ナフタリ・ベネット新首相はヤイル・ラピド新外相と共に、イスラエルの歴史とその多様性の中でユニークな連立政権を形成しました。私たちのコミュニティーは、これまでの政権と同様、イスラエル新政権とオープンで友好的な関係を築いていきたいと考えています」
ネタニヤフ氏については、イスラエルの経済を強化し、世界中に広く友好関係を築き、中東全域の平和と安全を実現したとし、その努力は並外れたものだったと称賛。さらに、新型コロナウイルスに対する対応も「世界の羨望の的」だったと評価。「ビビ(ネタニヤフ氏の愛称)はイスラエルで最も長く首相を務めた一人であるだけでなく、歴史的なリーダーの一人でもあります。福音派はネタニヤフ前首相との友情を誇りに思っており、それはこれからも続いていくでしょう」