米南部バプテスト連盟(SBC)の出版部門「ライフウェイ・クリスチャン・リソーシーズ」の理事会は9月30日、緊急会議を開催し、退職合意書に違反した疑いがあるとしてトム・レイナー前社長を提訴したことについて協議し、訴訟を取り下げ、別の方法で解決を模索することを決めた。さらに今月5日には、レイナー氏と話し合いの場を設け、訴訟ではなく「双方の相違について友好的に解決する」ことで合意した。
SBCの機関紙「バプテストプレス」が引用した訴状(英語)によると、訴訟は米テネシー州ウィリアムソン郡で9月28日に起こされた。レイナー氏は昨年退職した際、2021年10月31日まで、ライフウェイ社の競合他社と営業行為をしないことで合意していた。合意書に記載された競合他社の中には、ティンダルハウス出版(イリノイ州)があるが、同社は今年8月、ベストセラー作家でもあるレイナー氏との間で「複数の著作および複数年の契約」を結んだと発表していた。
発表(英語)によると、レイナー氏とのパートナーシップにより、健全な教会運営に不可欠なトピックをカバーする著書が、今後数十年間で複数出版される予定だという。各著作には、教会指導者を力付け、信徒を啓発する目的で、動画カリキュラムや参加者ガイド、補完的な書籍も付録として付くことが計画されていた。
ティンダルハウス出版のロン・ビアーズ副社長は当時、次のようにコメントしていた。
「ティンダルハウス出版は、トム・レイナー氏およびチャーチ・アンサーズとの長期的パートナーシップに喜んでいます。レイナー氏は有能な指導者であり、教師、またコミュニケーターであり、その個人的使命はティンダルハウス出版の使命と完全に一致しています。彼は思慮深く、才能のある作家であると同時に、教会のニーズや生命線について、つまり教会指導者や会衆について誰よりも熟知しているため、幾万もの教会のために大きく用いられ、尊敬されています。共に働くことで、私たちがユニークで強力なツールを作ることができ、キリストの体なる教会に奉仕できることは疑う余地がありません。そうすることで私たち全員が、神の栄光のために御国の建設にますます貢献できるのです」
レイナー氏は昨年10月、ライフウェイ社から「出版活動の友好的な許可を書面で」受け取り、同社の弁護士とも話し合っており、今年9月末に訴状を受け取るまでは「すべてが順調だと思っていた」と、バプテストプレスに説明していた。
「提訴を知る前、私は今年9月8日にライフウェイ社の代表者からこの問題について一度だけ話を聞きました」とレイナー氏。「ライフウェイ社の弁護士から、他の出版社との関係について説明を求めるメールが届きました。私は同日、迅速かつ本質的な対応をしました。さらに私は、応答の中で理事たちとの会合を申し入れました。昨日提訴されるまで、私はすべてが順調だと思っていました」
ライフウェイ社は訴状で、「出版契約が終了したこと」によって、レイナー氏が競業避止義務(自身の地位を私的に利用し、営業者の業務と競合する取引をしてはならない義務)から「解放されたわけではない」と主張している。レイナー氏とライフウェイ社の移行合意書によると、レイナー氏は2020年10月31日まで有給の被雇用者、すなわち最高顧問として留任されている。
訴状は、レイナー氏の行為により「ライフウェイ社は、即座に取り返しのつかない損害を被ることになる。法的に適切な救済措置がないためだ」としている。さらに訴状は、レイナー氏にティンダルハウス出版との関係を終了させ、ライフウェイ社に対して不特定の損害賠償を支払うよう求めている。
9月30日に行われた緊急会議は、SBC理事会内の論争を終わらせることを目的としていた。
ライフウェイ社のジミー・スクロギンス理事は提訴に失望しており、「恥ずかしく」「御国に損害を与える」ものだと述べていた。
「レイナー氏との契約上の紛争を解決するためのより良い選択肢が、これまでもあったし、現在もあると確信しています」とスクロギンス氏は述べ、この問題は理事会全体で議論すべきだったとする考えを示していた。
ティム・ロジャース氏を初めとするSBCの牧師らも、訴状との見解の相違を公に表明している。
「これは悲しいことです。神がSBC理事会の指導者たちの心を動かし、常識と聖書の権威を認めさせてくださいますように。これは、金銭という祭壇の上で聖書の権威が失われたときに起こることです」と、ロジャーズ氏はツイッター(英語)につづっている。