妊娠中に新型コロナウイルスに感染し、子どもは無事出産するも自身は容体が悪化し、集中治療室(ICU)で77日間にわたって治療を受けていた女性が奇跡的な回復を遂げ、このほど病院を退院した。女性は、生還できたのは、多くの人が祈り、神の力が働いたためだと語り、神と祈ってくれた教会の人々に感謝の思いを示した。
「奇跡の回復」を遂げたのは、ジャヨン・リーさん(38)。妊娠後期に新型コロナウイルスに感染し、ドイツ国内の病院で3月9日、次男となる男の子を出産。母子感染を防ぐため、新生児は生まれてすぐに別室に移された。リーさんはICUで治療を受けることになるが、肺がほとんど機能しなくなるまで容体が悪化。リーさんの夫は医師から最悪の事態に備えるよう告げられた。
3月18日、リーさんは昏睡状態に陥り、人工呼吸器につながれた。リーさんは深刻な呼吸不全に苦しみ、1週間が経過しても肺は反応せず、リーさんの肺はさらに弱っていった。そのためリーさんは、欧州最大級とされるベルリンのシャリテ大学病院に移送され、直ちに体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)による治療が行われた。ECMOは患者の血液を体外に取り出し、人工肺で酸素を取り込ませ、二酸化炭素を除去した後、再び患者の体内に戻す生命維持装置で、新型コロナウイルスの重症患者の治療に使われている。
リーさんが通う教会の信徒たちは、リーさんが昏睡状態にある間、24時間の断食祈祷をリレーでつなぎ回復を祈り続けた。そして、リーさんが昏睡状態に陥ってから約1カ月後の4月14日、意識が回復。しかしこの時はまだ、自分で話すことも呼吸することもできない状態で、その後もECMOによる治療が続いた。
危篤な状態は48日間にも及んだが、5月12日にようやくECMOが取り外された。その後は酸素吸入を受けながら、リーさんは徐々に自分自身で呼吸ができるようになっていった。
5月22日、リーさんはついに出産後離ればなれになっていた息子と対面。出産から75日目に、初めてわが子を抱き締めることができた。そして25日、危機的な状況を脱したリーさんは、出産後77日間にわたるICUでの治療を終え、シャリテ大学病院を退院。今後はリハビリテーション病院に移り、完全な回復に向けてリハビリを行うことになる。
ICUで治療を受けた77日の間、医師や看護師らはリーさんを「ユニット(病院の科)の星」や「奇跡」と呼んでいたという。
「シャリテ大学病院の医療スタッフが、細心の注意と愛情をもって治療に当たってくださったことに心から感謝しています。私は、友人たちが私の回復のため、また私の治療に当たる医師たちのために祈ってくれたことを医師たちに話し、祈りが功を奏したことを証ししました。
暗くて深い谷にいるように感じていましたが、皆さんの祈りによって神の力が働き、ついにそこから出ることができました。教会の多くの方々が、また私の知らない方々までもが祈ってくださったことを知り、衝撃を受けました。私が生きているのは皆さんのお祈りのお陰なのだと心から思わされ、涙しました。
息をすることができるようになりました。そのことだけでも、どれほど感謝すべきか私は気付いていませんでした。今、私は生かされている恵みを感じています。もう一度生きるチャンスが与えられました。私の人生はもはや自分のものではなく、キリストのものです」
リーさんは、この新型コロナウイルスとの闘いの中で激しい肉体的苦痛を経験した。特に、肋骨(ろっこつ)の間から挿入されていた肺の排液チューブが詰まってしまったときの苦痛は忘れられないという。その激しい痛みの中でリーさんは、イエスが十字架の計り知れない肉体的苦痛の中で苦しまれたことを思いめぐらし、慰めを見いだした。
「私たちの罪のためにイエス様が十字架にかけられ、苦しまれたことを深く考えることができました。ですから、私は激しい苦しみを経験しましたが、救い主が私のためになしてくださったことの故に感謝の思いが増し加わりました。
私が今ここにいるのは主の恵みです。また私は、信仰的に成長させられたと感じています。自分の力ではなく、他の方々の愛と祈りによってです。皆さんのお祈りにとても感謝しています。皆さんのお祈りのお陰です。私の完全な回復のために、どうか引き続きお祈りください」