米シカゴ近郊のメガチャーチ「ハーベスト・バイブル・チャペル」(HBC)の創立者で長きにわたり主任牧師を務めてきたジェームズ・マクドナルド氏が12日、不適切な発言をめぐって解雇された。
HBCの長老会は13日、教会のウェブサイトに声明(英語)を掲載し、「大きな悲しみをもって」解雇を決定したと報告した。声明によると、この決定はマクドナルド氏による「極めて不適切な発言」が、12日朝に地元のラジオ番組で放送されたことなどを受けての措置。
「この度の発言とその他の行為を考慮した結果、当教会の規則が定める手順に従い、マクドナルド牧師は当教会の主任牧師および長老の職を解かれました。長老会の判断によるもので、当教会の最善の利益に反し、有害と思われる行為に関与したためです。2019年2月12日付で、マクドナルド牧師はハーベスト・バイブル・チャペルを解雇されました。この決定は、真摯(しんし)な祈りに多くの時間を費やし、信頼の厚いさまざまな外部識者から助言を受けた上で、重い心をもって下されたものです」
マクドナルド氏の不適切発言は、HBCの元教会員でラジオ司会者のマンコー・ミュラー氏が放送した。
録音の中には、米キリスト教誌「クリスチャニティー・トゥデイ」のハロルド・スミス最高経営責任者(CEO)のパソコンに児童ポルノを仕掛けるという話や、同誌のマーク・ガリ編集長が、HBCに批判的な記事を書いていた女性ジャーナリストのジュリー・ロイス氏と不倫したとする冗談混じりの発言、ホイートン大学のビリー・グラハム・センターでセンター長を務めるエド・ステッツアー氏に対する暴言などが含まれていた。
ミュラー氏は、マクドナルド氏とHBCを相手取った集団訴訟も示唆。報道によると、ミュラー氏はマクドナルド氏の発言を録音した100時間を超える音源を所有しており、12日に抜粋して放送した50分間の会話すべてを、近々ポッドキャストで公開する考えも示していた。
一方、ロイス氏は12日、ブログ(英語)を更新。マクドナルド氏の言葉は「衝撃的」で「息が止まるほどだ」と述べ、嫌悪感をあらわにした。13日にもブログ(英語)を更新し、マクドナルド氏がついに解雇されたことに安堵(あんど)を示した。
マクドナルド氏やHBCをめぐっては、米キリスト教誌「ワールド」が昨年12月、「ハーベストの困難期」(英語)と題したロイス氏による長文の調査記事を掲載。教会内の財政不正疑惑やトップダウン式の虐待的組織構造、恐怖と脅迫の組織体質などを伝えていた。
HBCは、ワールド誌が報道する前の昨年10月、ロイス氏および元教会員2人とその妻らを名誉毀損で提訴している。彼らは2012年以降、「ザ・エレファンツ・デット(ゾウの借金)」と題したブログで、HBCやマクドナルド氏に対し批判的な内容を発信していた。しかし今年1月、訴訟における提出書類を非公開にするよう求めていたHBCの要求を裁判所が却下したため、HBCは訴え自体を取り下げている。
ザ・エレファンツ・デットには13日、声明(英語)が掲載され、HBCの教会員に対する悲しみと、HBCやマクドナルド氏の問題究明を支援してくれた人々への謝意を表明した。
「過去数週間にわたり、ミュラー氏は勇気を示してくださいました。多くの場合、福音派に最も欠けているものは勇気です。私たちは、ミュラー氏がこの時代に示してくださった真のリーダーシップにいつまでも感謝することでしょう。私たちは、HBCの多くの方々が痛み悲しんでおられると認識しています。私たちは皆さんの教会により良い未来が開かれることを願い、祈っています」
HBCは1988年、異なる5つの教会に通っていた18人が新しい教会形成を目指し、当時27歳だったマクドナルド氏を主任牧師として迎えて始まった。最初は地元の高校の一室を借りて礼拝をささげていたが、その後順調に成長し、現在はシカゴ近郊に9つのキャンパス(拠点)を持ち、毎週約1万2千人が礼拝に参加するメガチャーチへと成長した。