日本YMCA同盟(東京都新宿区、正野隆⼠会長)が、これまで使っていた赤い逆三角形に青でYMCAとあるロゴを変更し、1日から新しいロゴの使用を始めた。また、「みつかる。つながる。よくなっていく。」というスローガンも新たに定めた。YMCAとは、したい何かが見つかり、誰かとつながり、自分がよくなるかえがえのない場所であることを伝えるためという。
YMCAはキリスト教を基盤とした団体だが、伝道団体ではないため、宗教を問わず、すべての人に開かれている。また、137年もの歴史があるよく知られた団体だが、現在は職業教育や語学教育、保育事業や国際交流活動など、事業内容が多様化したことにより、「何をやっている団体か分からない」という声も多くなっていた。そこで2014年から、専門家を交えたブランド再生のためのプロジェクトを立ち上げ、互いを認め合い、高め合う「ポジティブネット」のある豊かな社会を創(つく)ることを団体のビジョンに決めた。
新ロゴは、アルファベットの「Y」をかたどりながら、鳥が飛び立とうとする瞬間をモチーフに、生命の息吹、未来へ向かう前向きな力、平和への思いを表現している。また、右上の逆三角形には、YMCA正章に示された「全人」(霊、心、体)の精神と、「みつかる。つながる。よくなっていく。」という新しいブランド価値の両方が込められている。曲線と赤い色によって、生命の息づかい(生命力)と、希望ある豊かな社会を実現していこうというポジティブな姿勢を示していることから、新ロゴの愛称は「ポジティブY」。色は、図柄部分は従来と同じく赤だが、文字部分は濃い紺色になっている。
今後、2019年までを目標に、看板や印刷物、ホームページ、ユニホームなどにある従来の赤三角形のロゴマークを順次新しいものに変えていく。今回のロゴマーク変更と新しいスローガンによって、これまでバラバラだったYMCAのイメージを統一していくという。
YMCAがこれから提唱していくのは、「ポジティブネット」という新しい社会概念。それは、「互いの存在や個性を認め合い、高め合うことのできる、善意や前向きな気持ちによってつながるネットワーク」。最低限の社会保障を提供する「セーフティーネット」の概念は近年広まりつつあるが、それよりも早い段階から機能する「誰もが⽣きやすい、希望ある豊かな社会を創造する社会安⼼網」だという。
日本YMCA同盟代表理事の神﨑清一氏はこう話す。「ユースが主体となるYMCAを再構築し、事業の質を高め、人々から共感、支援、賛同される会員の増加を目指していきたいと願います。ポジティブネットの創造は『神の国』の実現であることを確信しています」
YMCA(Young Men's Christian Association=キリスト教青年会)は、産業革命下にある英ロンドンで1844年、劣悪な労働環境に置かれた若者たちの心のよりどころになるべく、教派を超えた12人のクリスチャン青年によって始められた。創立者ジョージ・ウィリアムズは熱心なクリスチャンだったが、伝道のためではなく、キリストの「愛と奉仕の精神」をYMCA活動によって具体的に実践しようとしたという。その精神は今も受け継がれ、現在、119の国と地域で5800万⼈の会員を有する世界最⼤の⾮営利組織(NGO)となっている。
日本では1880(明治13)年、米国でYMCAの働きを知った英学者の神田乃武(ないぶ)をはじめ、組合派の小崎弘道や長老派の井深梶之助ら青年牧師の有志によって東京YMCAが創立された。その年の10月には上野公園で7千人の聴衆を集める野外大説教会を開き、また有名な「六合(りくごう)雑誌」を創刊して、諸外国の思想や学問を紹介した。
その後、大阪(1882年)、横浜(84年)、神戸(86年)など全国に広がり、旧制高等学校などに学生YMCAが作られるようになると、88年には東京大学YMCAが設立された。94年、東京・神田に千人を収容する大講堂のある赤レンガの東京YMCA会館が建設され、第2代の会館は1929年、現在の第3代の会館は91年に竣工された。
1903年、日本学生YMCA同盟と日本市YMCA同盟が合併して、日本YMCA同盟が結成され、12年、日本YMCA同盟が財団法人化。第2次世界大戦中、世界YMCA同盟から脱退するが、戦後、関係を修復した。現在、日本では35都市、36⼤学、250カ所以上に拠点があり、会員数は約14万⼈を有している。