第33回教会音楽祭が8日、玉川聖学院谷口ホール(東京都世田谷区)で開催された。今回のテーマは「心ひとつに―争いから交わりへ」。各教派の聖歌隊が歌う賛美がホールにこだまし、集った約800人の聴衆の心を1つに結び付けた。
教会音楽祭は1967年秋、ルーテル教会の長谷川健三郎氏、カトリック教会の佐久間彪氏、聖公会の宅間信基氏の3人が、「教派を超え、音楽をもって一緒に主を賛美する集いを」と話し合って始まった。その後すぐに、日本基督教団の賀川純基氏が加わり、1回目の教会音楽祭が68年にカトリック東京カテドラル関口教会で開催された。その後50年にわたる歩みの中で各教派の参加の輪が広がり、今やエキュメニカルな集会としては日本最大規模の集会となっている。
同音楽祭は、音楽を紹介し合うだけでなく、毎回主題を定めて、共に祈り合うことも大切にするため、次第に礼拝の形に整えられてきた。今回も礼拝形式で音楽祭は進められ、日本聖公会中部教区司祭の市原信太郎氏がメッセージを取り次いだ。市原司祭は学生時代に聖歌隊の一員として同音楽祭に参加した経験を持つ。「新しい歌を主に向かって歌え。・・・御救いの良い知らせを告げよ」(詩編96:1~2)という御言葉から次のように語った。
「なぜ新しい歌なのか。神の恵みは常に現在形で、神は今ここで働いている。私たちが新しい歌を歌うということは、今を生きるということだ」
そして、テーマである「心ひとつに」を踏まえ、教会の公同性を表す音楽祭であることに言及した。
「神の完全な唯一の教会という信仰の共同体の中に取り込まれたことの証しとして、今日ここに私たちがいる。共に歌うことによって、一人一人が、『すべての人を一つに』(ヨハネ17:21)というイエス・キリストの願いを心の中に受け入れている」
さらに、信仰を旅に例えて話した。
「信仰の旅は、新幹線に乗って旅するようなものではなく、一歩ずつ歩む旅。ただ、どんな時でも一歩を踏み出す時には、その拍子にどうしてもバランスを崩してしまう。しかし私たちには、その一歩を確かに支えてくれる信頼できるお方がおられるので、安心して旅を続けていける。そして御心であれば、この音楽祭の歩みがこの先も続けられることを祈る」
この日参加した教派は、カトリック教会、カンバーランド長老キリスト教会、日本キリスト改革派教会(有志)、日本基督教団、日本聖公会、日本長老教会(有志)、日本バプテスト連盟、日本福音ルーテル教会、在日華人クリスチャンセンター。
ピアノやパイプオルガンなどの奏楽で、それぞれの教派の聖歌隊が教会賛美歌をはじめ、ポップス調の「アメージング・グレイス」や、山本直忠・山本直純作曲の「聖フランシスコの『平和のための祈り』」など、多様なかたちで賛美をささげた。それぞれ異なった聖歌隊でありながら、音楽によってつながっていく姿は、個々の違いは決して分裂を招くものではないことを示していた。
同音楽祭では、2007年より会衆賛美歌の公募を行い、以来、新しい会衆賛美歌を生み出すことに努めてきた。今回も平和の思いが込められた多くの歌詞と楽曲が寄せられた中から、熊田なみ子さんの歌詞、田中真由美さん作曲のものが選ばれた。それに教会音楽祭実行委員会が補作として和声を付けた「心ひとつに」を会衆全員で賛美した。さらに、選ばれこそしなかったが、優れた曲であったということで、佐藤容子さんの曲もプログラム中で使われた。
会衆賛美をリードしたのは、同音楽祭のために結成された合同聖歌隊、エキュメニカル・オープン・クワイア。指揮を務めたのは、結成以来、同クワイアを指導してきた日本同盟基督教団等々力教会牧師の井上義(ただし)氏。音楽祭の最後には、「祝祷」として使われる民数記6章24〜26節を基にした「主があなたを祝福し」(訳詞:那須輝彦、曲:J・Rutter)を同クワイアが高らかに賛美した。
同音楽祭の実行委員会の代表を務めたカンバーランド長老キリスト教会東小金井教会牧師の関伸子氏は、「『心ひとつに―争いから交わりへ』という今回のテーマは、今年が宗教改革500年という点からしても大きな意味を持つ」と話した。そして、「今後は交わりの後をどうするかが問題になってくる。その次を私たちはどうしていけばいいのか、しっかり考えていかなければならない」と、再来年に予定されている次回の教会音楽祭に目を向けた。
神奈川県大和市のプロテスタント教会に通う60代の男性は、「各教会がそれぞれ選んだ曲を歌い、非常に楽しかった。次も参加したいです」と感想を語った。