日本最大規模のエキュメニカルな音楽集会「教会音楽祭」の第32回が5月30日、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会(東京都新宿区)で開かれた。この音楽祭は、1968年に、ルーテル教会・カトリック教会・聖公会の聖職者3人が、「教派を超え、音楽をもって一緒に賛美をする集いをしてはどうか」と呼び掛けたことに始まる。各教会の音楽の発表の場、交わりと一致の実践の場、日本の教会音楽の在り方を模索する場として、これまでの参加教派は20近くにまで広がっている。
作曲はカトリック、作詞はプロテスタントの「ガリラヤの風かおる丘で」(新聖歌40番)など、エキュメニカルな新しい賛美歌が生み出される母体となり、回ごとに新しい試みを伴って開催されてきた。今回は「とどけ、平和を求める祈りと賛美」をテーマに、日本の諸教会が教派を超えて編成した合同賛美グループ、カトリック東京韓人教会、在日華人クリスチャンセンター(JCC)、コミュニティーアーツ東京シンガーズ(CATS)などが参加し、日本語や韓国語、中国語、英語で歌われる賛美が会堂いっぱいに響き渡った。
説教したのは、カトリック東京司教区の小宇佐敬二司祭。「神が私たち全人類に望んでおられることは平和です。しかし、人間には平和を実現していくことはできません」と話し、「人間の思い描く平和は幻想にすぎない」と、ユダ王国の王アハズを引き合いに出した。台頭するアッシリアに対抗するため、これと軍事同盟を結び、軍備を拡大したアハズは、預言者イザヤを通して主により頼むようにと告げられるが、それを拒む。人間は力を誇り、力によって平和は実現されると幻想してしまう。それはアハズの時代も今の時代も変わらないと、小宇佐司祭は話す。自分の力を頼みとしたアハズに対して、神は、人間の思いもよらない方法で平和が実現することを告げる。「ひとりのみどりごによってもたらされる、平和・正義・公正。これらは神の恵みの業なのです」と、小宇佐司祭は語った。
音楽祭は、式次第にのっとって、厳かに進行された。参加者一同による会衆賛美「地には平和」が歌われ、旧約聖書、福音書の朗読がなされた。しかし、参加する聖歌隊が伴奏に使用する楽器や、その演奏形態はさまざまで、決して堅苦しい雰囲気は感じさせない。カラフルな衣装を着て、振り付けを伴った賛美をするJCC、アングリカン・チャントと呼ばれる伝統的な朗唱法で詩編を唱える日本聖公会東京教区聖歌隊。カトリック東京韓人教会のカリタス聖歌隊は、伝統的な太鼓のリズムに合わせて、軽快な韓国民謡調の歌を披露。イエスのカリタス修道会のスモールクワイヤは、女性合唱らしい澄んだ歌声を会場に響き渡らせた。
しかし、どの楽曲も今回の音楽祭が掲げる「平和」にふさわしいものが選ばれており、会衆は思いを一つにして、平和を求める賛美を神にささげた。また、日本キリスト改革派教会、日本聖公会、日本長老教会、日本同盟基督教団、日本バプテスト連盟の各教派の司会者に導かれた平和のための共同祈願がささげられ、平和を阻む心を悔い改め、国と民族の垣根を越えた主の平和の実現を祈り求めた。