昨年、創刊70周年を迎えたキリスト新聞社(東京都新宿区)は、先月の定時株主総会で取締役の改選を行った。金子和人(前社長)、松谷信司、東海林昭雄、佐々木炎の4氏を選出し、その後の取締役会で、松谷信司氏を代表取締役社長、東海林昭雄氏を取締役会長に選任した。
キリスト新聞社は終戦間もない1945年12月、賀川豊彦と武藤富男によって創業され、翌年、週刊「キリスト新聞」を創刊した。48年から全国のキリスト教会の情報を掲載した『キリスト教年鑑』を刊行し、現在は書籍や雑誌「Ministry」も手掛けている。
新しく社長に就任した松谷氏は昨年、青山学院大学相模原キャンパスのチャペルウィーク中に行われた「イエスぱねえ マジネ申すぎてワロタww」の講演をきっかけに、全国各地の講演会に呼ばれ、キリスト教界に新風を吹き込んでいる。そして来月には「キリスト新聞」がリニューアルされるという。
松谷氏は1976年生まれ。小学校教員を経て、2006年にキリスト新聞社に入り、季刊「Ministry」や週刊「キリスト新聞」の編集長を務め、著書には『キリスト教のリアル』(ポプラ社)がある。日本キリスト教会浦和教会長老。このたび社長に就任したばかりの松谷氏に話を聞いた。
【特報】「キリスト新聞社」創業71周年PR動画 「斬新なキリ新へ 一新。」
――昨年70周年を迎えたキリスト新聞の創刊から現在まで一貫して伝えてきたこととは何ですか。一方で、時代に合わせて変えてきたものもあると思います。70年間で変わったもの、変わらないものを教えてください。
賀川豊彦をはじめ、弊紙の創刊に携わった先人たちは、「キリスト教新聞」ではなく、あえて「キリスト新聞」と名付けました。そこには、キリスト教という「宗教」の「教義」ではなく、キリストの姿「そのもの」を伝えたいという思いが込められています。創刊以来70年間、その精神を継承し、プロテスタントからカトリック、正教会まで、特定の教派によらず、自由な立場で報道するという姿勢は一貫してきたと思います。だからこそ、キリスト教の課題や教会の負の歴史についても切り込むことができました。時代が変わることによって、教会が直面する課題や求められる情報も様変わりしてきました。その現実を直視し、また折々の世界情勢を見据えながら、歴代の編集者たちが紙面の内容や構成、デザインなども工夫を重ねて変えてきたと思います。
――7月に紙面リニューアルを控えていると伺っています。どのように変わるのですか。
まずは大きさが今までの半分のタブロイド判になります。デザインも旧来の「新聞」から「情報誌」のようなイメージに一新します。発行頻度は毎週から月3回(1日、11日、21日)に1回分減らし、その分、8ページ立ての紙面内容をより充実させたいと計画中です。これまで好評だった連載は引き継ぎながら、新しい連載も多数予定していますので、ご期待ください。また、紙と同じ紙面のデータがスマホやパソコンで閲覧できる電子版も同時にスタートします。料金は定期購読の場合、紙版も電子版も1年間で1万5700円、半年で7900円。単価は432円(税込)です。
――松谷社長ご自身について伺います。入社してから今までのこと。入社のきっかけ、入社してからどんな事業に携わり、どんな変化を感じてきましたか。
入社のきっかけは、長男の誕生を機に前職の教員を辞めて、キリスト新聞社の面接に応募したことです。程なくして「キリスト新聞」の記者の仕事を任され、ゼロから「編集」の仕事を見よう見まねで学びました。今年でかれこれ11年目になりますが、その間、雑誌「Ministry」の創刊やカードゲームやアプリの開発なども経験し、思いの他、それ以外の仕事も増えてきました。この間の動きで最も印象的なのは、信徒以外の「にわかファン」も意識するようになったことです。これまでは、1パーセント未満と言われる教会「内」の信徒向けに商売をしてきた会社でしたが、教会「外」でキリスト教への注目度が増してきたこともあり、99パーセントの中に潜在的ニーズを見いだして、新たに市場開拓する必要性を痛感しています。
――若い世代にメッセージがあればぜひ。
若い世代には、4K(カタい、キツい、クラい、コワい)などと思われている教会も、案外行ってみたら面白いかもしれないし、キリスト教や聖書、牧師、クリスチャンも、思っているほど特別な存在ではなく、身近で親しみのあるものとして接してもらえたらと願っています。そのためにも、「間口は広く、敷居は低く、奥行きは深く」の精神で、多彩な情報発信に引き続き努めていきたいと思います。
――代表取締役に就任されて、今後の抱負をお聞かせください。
特に肩書が変わったからと言って私自身の姿勢はあまり変わらないつもりでいます。とにかく社員にとっても働きやすい職場でありたいですし、無駄なことはいち早くやめて、最小限のコストで最大限の結果を発揮できるようなクリエイター集団になれればと願っています。