日本のキリスト教出版社として最大の規模を誇る「いのちのことば社」(宗教法人スウェーデン同盟キリスト教団出版部門、本社:東京都中野区)の社長に岩本信一氏が就任した。基督兄弟団横浜教会の信徒で、名誉会長となった多胡元喜(たご・もとよし)氏のもとで「クリスチャン新聞」の広告営業の働きに長年携わってきた。
多胡氏が今月、70歳になるのを機に24年間務めた会長職を退き、同紙広告営業で共に汗を流した愛弟子に経営をバトンタッチすることになる。岩本氏は50代、また周りを固める専務の峯島平康氏と常任役員の下部文孝氏は共に40代と、多胡氏が会長に就任した1994年以来、経営陣が若返ることになった。
いのちのことば社はプロテスタントの中でも戦後、教会数を伸ばしてきた「福音派」の出版社として、1950年、米国の「ゼ・エバンゼリカル・アライアンス・ミッション」(TEAM)の宣教師ケネス・マクビーティ氏により設立された。当時、マクビーティ氏は23歳。「私の人生は1枚のトラクト(伝道用小冊子)によって変えられた。世界一識字率の高い日本で文章伝道を」という同宣教団体理事長の言葉を聞いて心動かされ、その文書伝道部門として始まったという。その経緯はマクビーティ氏の著書『いのちのことばをしっかり握って』(いのちのことば社)に詳しい。
翌年、月刊「百万人の福音」(当時、「生命の糧」)が創刊され、62年、直営店であるライフセンター渋谷店(後に新宿のオアシスブックセンターに統合)を開いて全国展開を始め、65年から新宿区信濃町に本社ビルを持った。その年、福音派が礼拝に使うための聖書「新改訳」の新約が関連団体の日本聖書刊行会から刊行され、いのちのことば社から発売された。週刊「クリスチャン新聞」は67年の創刊。その他、『新聖書注解』(全7巻)など、多くの信仰書や伝道文書、教会学校教案誌「成長」、ディボーションガイド「マナ」、トラクト、グッズ、CDやDVD、パソコンソフトなどを手掛けるほか、宿泊施設「恵みシャレー軽井沢」も運営している。
94年に創立者のマクビーティ氏が退任し、多胡氏が会長に就いたことにより、これまで米国人宣教師のもとでなされてきた経営が日本人の手に託されることになった。また2009年、信濃町の本社ビルの老朽化にともなって中野区に本社を移転した。
同社は今日までの67年間、日本における文書伝道の働きを担ってきたが、経営陣の顔ぶれが刷新され、これから第3ステージに進むことになる。また新体制をスタートするにあたり、2025年までに同社の働きを通して日本人口の10パーセント(1200万人)に福音を伝えることを目標に掲げた。
■ 岩本信一新社長のあいさつ(同社公式ホームページ)