『どんなことにもくよくよするな!』(イーグレープ出版)の著者、佐々木満男弁護士のコラムを連載します。ラジオ大阪で現在放送中の人気番組「ささきみつおのドント・ウォリー!」(放送時間:毎週土曜日朝11:45〜、インターネットhttp://vip-hour.jpで24時間無料配信中)でこれまでに放送された内容を振り返ります。「ミスター・ドント・ウォリー」こと佐々木弁護士が、ユニークな視点から人生のさまざまな問題解決のヒントを語ります。(Amazon:どんなことにもくよくよするな!)
「打たれ強くなる」。あなたは「打たれ強い」方ですか?それとも「打たれ弱い」方ですか?近頃は、「打たれ弱い」人が増えてきたようですね。特に若い人たちに多いようです。
親からちょっと小言を言われただけで家出をしてしまう高校生、上司から注意されると会社をやめてしまうサラリーマン。ささいな口喧嘩で離婚してしまう若い夫婦。
社会はますます厳しい状況になっていきますから、「打たれ弱い」人よりも「打たれ強い」人になるように心がけましょう。「打たれ強い」人というのは、どんなに人から小言を言われても、注意されても、罵倒されても、それを気にしないでいられる人ですね。その時は気になって傷ついても、すぐに忘れて傷もいやされてしまう人です。
「打たれ強い」人になるためには、どうしたらいいでしょうか。自分に確固たる自信を持つことだと思います。「あるがままの自分でいいんだ」という自信です。「人は人、自分は自分」という自己の確立です。「自分は自分なりにベストを尽くして生きている。それでなにが悪いんだ!」と開き直ることですね。ただし、そう言ってしまうとケンカになりますから、それを心に秘めて相手の意見を聞くことです。人はそれぞれ勝手に自分を見て評価しているわけです。人の言うことにいちいち左右されていたら、いつまでたっても自信を持つことはできません。
「内の社員に自分のペースでしか仕事をできない男がいます。周りの人たちがイライラして能率が落ちるので、首にしたいのですが」。ある外資系企業から相談を受けたことがあります。「そういう理由だけで首にすることはできません。その社員に適した部所に移動することはできないのですか?」と聞きましたら、「いろいろな部所に回しましたがどこでもだめなのです。上司が怒ってどんなに注意しても、同僚たちからさんざんいやみを言われても、本人はビクともしません。それがまた、怒りとイライラを増長するんですね。しかたがありません、何も仕事を与えないで窓側族にします。そうすれば自分から会社を辞めるでしょう」
ということで、この社員にはデスクと椅子があてがわれただけで、電話機もなくパソコンもありません。仕事もないため毎日、自分のデスクで新聞を読んだり、会社の資料を研究したりするしかありません。普通の人だったら、めげてしまい、すぐに会社を辞めてしまうところです。
でもこの社員はめげませんでした。かえって、「上司から怒鳴られることもなく、同僚からいやみを言われることもなく、気楽でいいなあ」と思ったのです。「仕事をしなくても給料をもらえるなんてこんなありがたいことはない、この際経済や経営を学ぼう」と、夢中になって勉強しました。そのおかげで、一年後には経営コンサルタントの資格をとってしまったのです。二年後には、その会社よりもっと高い地位でもっと高収入のポストで他の社に引き抜かれていきました。「打たれ強い」って得ですねえ。
リストラで会社を早期退職し、自分の会社を立ち上げた人がいます。その経験を、「辞めるが勝ち」という本にして出版したところ、大ヒットしました。ところが、しばらくして会社の経営がうまくいかなくなり大変苦労しました。「こんなことなら会社を辞めるんじゃなかった」と後悔しました。そして今度は、「辞めないが勝ち」という本を出版したんですね。「会社がいやになったら退職して自分で起業すればいいなんて安易に考えない方がいいですよ。起業の成功率は非常に低いのです。自分だけでなく、周りを見てもほとんどが失敗しています。無理に起業して失敗し、一家が路頭に迷うような苦しみをするよりも、多少はつらくてもがまんしてサラリーマンをつづけた方がよっぽどいいんです」ということを、自分の体験を元に本にしたのですね。そうしたら、これがまた大ヒット。
この人は「打たれ強い」ひとですねえ。「転んでもタダでは起きない」人です。「辞めるが勝ち」という本をベストセラーにし、後で今度は、「辞めないが勝ち」という逆の本を書いてベストセラーにする。私たちもこのくらい「打たれ強い人」になりたいですね。
佐々木満男(ささき・みつお):国際弁護士。宇宙開発、M&A、特許紛争、独禁法事件などなどさまざまな国際的ビジネスにかかわる法律問題に取り組む。また、顧問会社・顧問団体の役員を兼任する。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。