フランス北部ルーアン近郊で先月26日、過激派組織「イスラム国」(IS)の信奉者とみられる男2人がカトリック教会に押し入り、ジャック・アメル司祭(85)を殺害する事件が発生した後、日曜日の同31日、キリスト教徒との連帯を示すため、フランス全域でイスラム教徒がカトリック教会のミサに出席した。多くのイスラム教徒は、この犯罪行為をもたらしたのはイスラム教ではないと主張した。
ルーアン大司教区のドミニク・ルブラン大司教は地元テレビ局BFMTVに、「私たちは非常に心を打たれました。それは自らの身をもって友愛の精神を表す大切な行為でした。彼らは私たちに語り、そして私は彼らが誠実であると思います。ジャック・アメル司祭を殺害したのはイスラム教ではないのです」と語った。
アメル氏は26日、ルーアン近郊のサンテティエンヌ・デュ・ルブレの教会での朝のミサの最中に、ISの信奉者ら2人に喉をかき切られ、殺害された。この恐ろしい襲撃事件は、フランスの国中を震撼(しんかん)させた。
ローマ教皇フランシスコもまたこの襲撃事件に衝撃を受け、「特に教会の中で、地上の平和を神に嘆願する典礼的行為であるミサを祝う最中に、この暴力行為が起こったことに動揺する」と語った。
英BBCは、フランス・ムスリム協議会(CFCM)が同国内のイスラム教徒らに襲撃事件に関してカトリック教会への「連帯と同情」を示すように呼び掛けたと報じた。
ミサに出席したイスラム教徒の中には、サンテティエンヌ・デュ・ルブレにあるモスクの寺院長であるモハメド・カラビラ氏のようなイスラム共同体の指導者たちもいた。
カラビラ氏は、「これは身をもって示されるべきなのです。なぜなら、今までイスラム共同体は人目につかないことを多くしてきたからです」と語った。
カラビラ氏はまた、「私たちは今日、皆さんの前でジャック・アメル司祭の家族に口づけすることによって、またルブラン大司教に口づけすることによって、身をもって示したいのです。それによって、人々は2つの共同体が1つに結ばれていると知るでしょう」と語った。
ロイター通信は、カトリック信徒らがイスラム教徒の客人たちを歓迎したと報じた。カトリック教会とイスラム教徒らによる特に大きな集会の1つは、パリ郊外のサンドニ大聖堂で開催された。
ミサに出席したカトリックの女性信徒ダニエル・リュドンさんは、「私たちがイスラム教徒たちを招けたことを喜んでいます。私たちもまた、彼らの痛み、苦しみを味わった全ての人たちの痛みをあらゆる仕方で共有するのです」「表された感情はとても、とても強いものでした。彼らイスラム教徒の何人かは非常に心を痛めていました」と語った。
夫と子どもたちと一緒に集会に出席したイスラム教徒の女性ハヤットさんは、「これは基本的に、平和に加えて、一致のメッセージです。集会は実際に一致を表していました」と語った。
イタリアのイスラム教徒たちもまた、彼らの信仰はイスラム教の過激分子によって実行された暴力行為を認めないことを示すために、31日のミサに出席した。
イタリア・イスラム共同体連合(UCOII)のメンバーであるモハメド・ベンモハメドさんは、「モスクは、熱狂主義者たちが過激思想に染まる場所ではありません。モスクはテロリズムと正反対のことをするのです。モスクは平和と対話を広める所なのです」と語った。
その間、フランス当局者は、襲撃犯の1人、アブデル・マリク・プティジャン容疑者(19)のいとことされるファーリド・K容疑者(30)を含む男2人を、アメル氏の殺人に関与した容疑で逮捕したことを明らかにした。
ISを信奉していたとみられるプティジャン容疑者と共犯者のアデル・ケルミシュ容疑者(19)は、事件のあった26日、警察によって射殺されている。