昨年11月に長年所属していた音楽事務所「SENS ROOM」から独立し、活動を新たに出発したクリスチャンミュージシャンの神山みさ。来月3月1日には武道館への道のりの第2ステップとなる渋谷O-Westでの500人ワンマンライブが待ち受ける。独立後、第一弾セルフプロデュース・アルバム『また会う日まで』のレコ発ライブも兼ねた、今回のライブ『Happy Geek vol.10〜ただ前に、進め。〜』が間近に迫った彼女に直撃インタビューした。
― 昨年11月に8年間所属していた事務所を辞め、独立に踏み切った大きな理由は何だったんですか?
昨年1月から武道館のステージに立つという夢を語り始めて追いかける中で、今のままではそこに行けないと思ったんです。どうやったらその夢に辿り着けるのかと考える中で、この事務所にいたのではこれからもずっと同じ場所にいるのではないかと思いました。マイペースに好きな事だけやるのならそのままでも良かったのかもしれませんが、夢のために「もっと前へ進みたい」、「新しい場所へ向かっていこう」という思いで事務所を出ることにしました。
― でもリスクも大きかったのでは?
そうですね、やっぱり不安もありました。失うものもあると思いましたし。でもそのリスク以上に新しい出会いが絶対にあるはずだという期待がありました。事務所を辞めて実際にやることが増えましたね。CD制作やサポートミュージシャン探し、それにライブの企画や宣伝、サイト更新、着メロの管理、雑用も全部やってます。でもファンの方が2人ボランティアスタッフになってくれて、今回は一人でやってる気がしないんです。事務所に所属してた時は人は沢山いたんですけど、何か孤独でした。だけど、今は人数は少ないけど一緒に話し合ったり心の近い関係を作ることができて、一人じゃないっていうのをすごく感じてます。
― 今回の新しい出発で心境の変化はありましたか?
それは特に変わってないですね。環境の変化はあったんですけど、どこか同じ温度でやれています。いつも柔軟でいたいし、ちゃんと見極めていきたいです。夢は変わらないから、気持ちもぶれません。
― では音楽活動を始めた当時と今とで、自分の活動に対しての意識の変化は?
それは全然あります。(笑)上京してきたのが9年前。東京に出て来た時は、「自分がどうなりたい」とかなかったですね。むしろ「何かできるかな」という感じで来ました。上京してから3年間くらい、自分が何のために東京に来たのか何度も悩みました。でもその過程で本気で考える中で、聖書の言葉にある「自分のからだをもって、神の栄光を現しなさい」(1コリント6:20)という言葉が与えられたんです。「そうだ、この体をもって神様の栄光を現せばいいんだ」。そこから何で音楽をやっているのかが見えてきたんです。
― 重要なターニングポイントがあったんですね。
そうですね。それから、そういう思いで歌い続けて、ちょうど2年前に今度は、「何のために音楽をやるのか」はわかったけど、「自分はどこへ向かっていくのか」がわからなくて、「じゃあ目標は何なんだろう?」と思うようになりました。それでしばらく考え続けて、その年の末にやっと「武道館のステージに立ちたい」という目標を立てられたんです。
― 武道館ライブとはまた大きく出ましたね。それはなぜ?
これは神様がくれた夢だと感じました。最初はちょっとデカすぎないかと思ったんですが、自分の力では無理だけど神様なら大丈夫じゃないかって。この夢のきっかけとなったアンジェラ・アキのコンサートで、彼女が、「夢を口に出すことで、その夢に一歩近づく」と語っていて、本当にそうだなと感じました。聖書にも口で告白することの大切さが書かれてるじゃないですか。それで去年からライブで毎回自分の夢を口で告白することにしました。昨年約140本くらいのライブを行ったので、140回くらいは告白しました。(笑)
― 素晴らしいですね。自分の夢を人に伝えるのって実は勇気がいることなんですよね。
毎回言う前に緊張します。本気でそれを目指してるから、簡単には言えない。告白する度に初心に帰るというか、その言葉が良い意味でも悪い意味でも自分に返ってきますね。イメージとしてどうやって武道館まで行けるのかは今の段階で全くわからないんですけど、一歩一歩目標に向かって階段を上っていこうと思ってます。昨年4月にその第一ステップの200人ライブを乗り越えました。少しずつハードルを越えていこうと、今年3月1日には第二ステップとなる500人ライブをやります。簡単ではないと感じるけど、諦めることだけはやめようと心に決めたんです。神様がこの夢をくれた意味があるはず。夢がある限りは追い続けようと思っています。
― ライブの話が出ましたが、今回のライブのメンバーはスゴそうですね。
そうなんです。なんとキンモクセイのギターをやってる後藤秀人がサポートしてくれることになりました。普段は自分でギター弾き語りをしてアコースティックなライブが多いんですけど、今回はアコギとエレキでギタリストが二人サポートしてくれて、今までと違ったCDに近い感じの音を聴いてもらえると思います。昨日からリハーサルを始めましたが、みんな私の音楽を気に入ってくれてるし感触はいいですよ。
― すごく期待が膨らみますね。今回のライブはレコ発ライブも兼ねているそうですが、アルバム『また会う日まで』はどんな作品に仕上がりましたか?
これはずっとライブの最後に歌っていた曲なんですが、CD化してほしいというファンからの要望がずっとあって、事務所からの独立をきっかけに今回思い切ってCD化することにしました。テーマは「ライブ感」と「あったかい音」。今までの作品はカッチリしているものが多かったんですが、今回はもっと柔らかく優しい感じにこだわって、ライブの雰囲気を作って録りました。
― レコーディングの裏話を聞かせてください。
実は金銭的な問題もあって、レコーディングは時間のない中で録ったんです。だから時間内に仕上げるのが難しかったんですけど、もう時間がオーバーしてるにもかかわらず、スタジオの方がわざわざ自分の時間を割いてまでミックスダウンしてくれたりして本当に感謝でした。あと今まではレコーディングで一日に1曲録るともう声がガラガラになってたんですけど、今回は曲数が多くても普通に声が出て一日で5曲全部を録れたんです。本当にみんなに祈られてるなぁと実感しましたね。それに制作費に関しても、どうしようと悩んでいた時に以前から応援してくれてたファンの方が突然支援を名乗り出てくれて必要が満たされました。このレコーディングを通して、見えないところでのみんなの祈りの力をすごい感じましたね。
― またイベントを後押しするように、インディーズアーティストを応援するテレビ朝日系列番組・「ストリートファイターズ」の人気投票でHYを押させて全国1位を獲得。最初に何を感じましたか?
1位になる前からみんなが応援のメールをくれました。もともと80位くらいをウロウロしてたものが、一ヶ月しないうちに1位に。一人の人の「神山みさを応援しよう」という呼び声からファンの間に広がり、その友達や家族へと広がり、気がつけば全然会ったことのない人まで応援してくれてたり。本当に嬉しかったですね。応援してくれているのが目に見える形で伝わってきて、とても励まされました。ランキングが上がったことで、ストファイを見て初めてライブに来てくれた人やチケットを買ってくれた人もいました。今まで出会えなかった人に出会えたのが何より嬉しかったです。
― ゴールに向かって着実に道が開かれていっているわけですね。
でもいつでも忘れてはいけないのは、「自分は何のために音楽をやっているのか」。いつでも最初の目的だった「神様の栄光を現していく」ことや、「歌が賛美であること」に立ち返りたいです。私はひとつのことにがむしゃらになり過ぎる癖があってマルタになりがちなところがあるんですけど、神様の言葉を聞ける余裕を持てるマリアになってから歌おうと心がけています。
― ライブのタイトルになっている『ただ前に、進め。』から、神山さんの強い意志が感じられますね。
昨年、『夢の始まり』という200人満員ライブを乗り越えて、第二段のライブタイトルに何を付けようかと考えた時に半年後の自分を考えたんです。半年後、ライブを目前に控えて自分が不安になっていたり、やめたいと思っているんじゃないか。そんな未来の自分にどんな言葉が必要か。それで考えた末に出た答えが、『ただ前に、進め。』でした。「うしろのものを忘れ、ひたむきに前のものに向かって進み…(ピリピ3:13)」という聖句にも似てますよね。コンサートは過程でしかない。さらに先には神の栄光が待っている。だから途中がどんなに荒れ狂っても関係ない。ただ前に進むだけです。
― ライブに来てくれるお客さんやCDを聴いてくれる人に一番伝えたい事は?
神山みさは、がむしゃらに生きていく人です。私も夢に向かって一歩一歩進んでいる途中だけど、「あなたも何か自分の夢を持って、一緒に夢を見ませんか?」とみんなに問いかけたいです。私と一緒に夢を見てくれる人と、その夢に向かって常に新しい場所に向かっていくチャレンジをしていきたいな。
― 最後にライブに向けての意気込みをどうぞ。
当日まで2つ目のハードルをクリアできると信じて、希望を持って歌い続けたいと思います。『ただ前に進め!』。
【神山みさ (かみやま・みさ)】 栃木県宇都宮出身のシンガーソングライター。 98年、モスバーガー・クリスマスソングコンテストにてグランプリを受賞。これをきっかけに上京し、以降、オーチャードホールで行われた「Act Against Aids」への参加や、114日間連続路上ライブを敢行するなど、本格的に活動を始める。昨年2月、スペイン映画『あなたになら言える秘密のこと』の挿入歌として起用され、スペイン、日本を初め、世界各国で上映される。現在までに4枚のCDをリリース。今年3月1日に通算5枚目となるアルバム『また会う日まで』をリリース予定。「ありのまま」を語る等身大の歌と、力強いギターサウンドを持ち味に、ライブハウスや路上、ラジオを中心に精力的に活動している。