透き通るような美しい低音と祈りを込めて歌う姿が印象的なTAKEOさん。牧師家庭に育ち、「剛勇丈夫(ますらたけを)よ、エホバ汝とともに在す」(士師記6:12、文語訳)より、「丈夫(たけお)」と名付けられた。「よく、『丈夫』という名前から、『縁起よく、良い名前ですね』と褒められるのですが、僕の名前には、聖書の言葉が込められているのです」と自己紹介した。
普段は、茨城県内の教会スタッフとして、教会付属の「認定こども園」でバスを運転し、子どもたちの送迎をはじめ、事務のスタッフとして忙しい日々を過ごしている。その合間を縫っての音楽活動は、決してたやすいものではないが、「行く先々での出会いと導き」を大切にコンサート活動も行っている。子どもたちが集まる場所では、大好きなマジックも披露する。子ども心を捉える鋭い感性は、日常の中で毎日子どもと接しているTAKEOさんの、賜物の一つといえるだろう。
2013年にリリースされた初アルバム『恵みの歌』では、収録した一曲一曲に思いがあった。自身の子どもが誕生した時には、大切な命が誕生した喜びといとおしさを込めた「大切な命よ」を作り上げた。「ありがとう 君がここにいる今を ありがとう 主がともにいる いついつまでも」という詩の中に、子育てをしている中でどんなにつらいことがあっても、親にとってはかけがえのない命なのだということを、柔らかなバラードで表現した。他にも、2011年に結婚した最愛の妻へ送った曲なども収録されている。星野富弘さんの詩に、さまざまなクリスチャンアーティストたちが曲をつけ、昨年、オムニバスアルバムとしてリリースされた『Colors of Tomihiro』にも参加。全国のコンサートで、さまざまなクリスチャンアーティストたちと共演を果たしている。
11月初めに千葉県内で行われた教会コンサートでは、歌声を披露するとともに、マジックや証しをした。証しの中でTAKEOさんは、東日本大震災の経験を話した。勤め先の認定こども園で評議委員会に出席していたTAKEOさんは、午後2時過ぎに大きな揺れを感じたが、その前日にも茨城県では地震が発生していたので、「またすぐに収まるだろう」と思っていた。しかし、その揺れは次第に大きくなり、立っていられないほどの揺れが続いた。手分けして子どもたちの部屋へ急行し、子どもたちを園庭へ避難させた。一番小さい0歳児は、一人一人を抱っこしながら避難させた。遠くでは火災が発生し、橋という橋は崩れ、紙、水、油の供給や上下水道の使用も困難な状態になった。「20リットルのガソリンを入れるのに、1時間並びました」と当時を振り返った。「『いつまでもあると思うな親となんとか』と申しますが、いつも当たり前のようにあった日常は、実は当たり前でもなんでもないのですね。私はあの時、身をもって体験したように思います」と話した。
震災と同年にTAKEOさんは結婚。しかし、翌年、義姉にがんが見つかった。夫婦共に大きなショックを受け、すぐに姉を見舞うことができなかった。「祈ってるよ」「神様が共にいますよ」という言葉は、本当に苦しんでいる人の胸に届くのだろうか。そんな時に、ピアノを触りながら自然にできた曲が「生きるwith Jesus」であった。
「避けられぬ試練 負わされ 壊れそうになって 今 心の痛みは 誰にも告げられぬまま」で始まるこの歌は、絶望の淵にいる時も、イエス様が共にいてくださる幸いを信じて仰ぎ、生きていこうと続く。
「『信仰』とは、信じて仰ぐこと。なにかふわふわしたようなものではなく、私たちを支えてくれる、これ以上ない確かな生き方なのです」とTAKEOさんは話す。さまざまな困難な中にあって、人は信仰を支えに生きていく強さを持つというのだ。
12月1日には、TAKEOさんも参加しているクリスマス・コンピレーションアルバム『The Gift』がアルファトラックスより発売される。7組のアーティストが心を込めて歌う「クリスマスの奇跡」などのオリジナル曲のほか、「O Holy Night」「もろびとこぞりて」などのスタンダード曲を含む全14曲が収録されている。アルファトラックスのウェブサイトから予約購入できる。