日本と韓国で交互に開催されている「第6回アジア景教研究国際学術大会」が10月27と28の両日、韓国水原市の水原中央長老教会(李敬云牧師)で行われた。
同大会の総会長である李敬云牧師は、韓国景教歴史研究院(京畿道華城市)の院長で、景教研究を始めて30年になる。5月に大秦景教流行中国碑の模刻碑を建立し、除幕式を行った。同研究院の博物館には、中国や韓国で収集した景教や古今のキリスト教関連遺物、書籍類が数多く保存されており、その多さには驚く。
韓国の景教研究者の一人で、今大会の準備と運営に尽力した韓国景教研究会会長の呂容悳牧師は、韓国教会新聞社社長であり、韓国カルビン大学校の理事だ。共著の『カルビン大学校史』の中で、景教について触れている。呂氏は781年、西安に建った景教碑を書いた呂秀巖(先祖は秦の始皇帝の父、呂不韋)の子孫でもある。
台湾から参加した台湾景教研究会会長で中原大学教授の呉昶興氏は、景教が中国に入って後、どのような書物を遺し、どこに保管されているかを詳細に話した。日本景教研究会の会員でもある呉氏は、最近発見された景教墓石についての著書をはじめ、中国語圏の景教研究の第一人者として多くの景教書を発行している。
日本景教研究会会員のハウディシェル・ブラッドフォード氏は、英語圏の景教研究の第一人者で、今回は2~3世紀の景教の源流であるシリアへの宣教について、また中国の初代宣教師の阿羅本と、西安に建った大秦寺会堂の意味について詳細に話した。
李敬云氏が収集した多くの珍しい遺物の中には、元時代の景教徒墓石をはじめ、「マニ教」に関係するとみられるものもあった。
景教徒の子孫たちは今も中国におり、特に香港では共同体を維持し、聖餐式も行われている。講演では、彼らが共通に持っている珍しい十字指輪の紹介もあった。
来年の大会は、関西で開催される予定だ。今後も共同研究を推進し、景教への正しい理解が広がることを参加者一同で願い、閉幕となった。
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川口一彦(かわぐち・かずひこ)
1951年、三重県松阪市に生まれる。現在、愛知福音キリスト教会牧師。日本景教研究会代表、国際景教研究会(本部、韓国水原)日本代表。基督教教育学博士。愛知書写書道教育学院院長(21歳で師範取得、同年・中日書道展特選)として書も教えている。書道団体の東海聖句書道会会員、同・以文会監事。各地で景教セミナーや漢字で聖書を解き明かすセミナーを開催。
著書に 『景教—東回りの古代キリスト教・景教とその波及—』(改訂新装版、2014年)、『仏教からクリスチャンへ』『一から始める筆ペン練習帳』(共にイーグレープ発行)、『漢字と聖書と福音』『景教のたどった道』(韓国語版)ほかがある。最近は聖句書展や拓本展も開催。
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【外部リンク】HP::景教(東周りのキリスト教)