米国の死刑廃止活動家は、影響力を持つ団体の一つである米国福音同盟(NAE)が19日、死刑への強い支持をトーンダウンさせる決議を発表したことで、より力づいただろう。
15日に可決された決議では、「福音派キリスト教徒は死刑に対する信条がそれぞれ違っており、死刑の公正な性質と全ての生命の不可侵性のどちらについても、聖書的な、また神学的な強い根拠を引用して説明しています。凶悪な犯罪を犯した人でも、まだ悔い改め、造り変えられる余地があるということです。私たちはキリスト教倫理として、どちらの流れの良心の在り方も正しいと確証します」と述べている。
この新しい決議は、死刑廃止や執行停止を呼び掛けているわけではないが、死刑に反対する立場の強さを認める点で、進歩だと捉えられている。
1973年に可決されたNAEの前回の決議では、死刑執行数の減少を遺憾に思い、身体的な傷害を伴うハイジャック事件や誘拐事件などの犯罪について、死刑を法定刑とするよう法制化を呼び掛けている。
1942年に創設されたNAEには、約40の教派の4万5千以上の教会が加盟している。死刑を支持する福音派キリスト教徒の数は近年減少しており、2014年には59%と、2011年の76%から大きく割合を落としている。また、国内全体の割合に近くなっている。
新しい声明が死刑廃止を呼び掛けるところまで至っていないことに一部の活動家は失望しているが、死刑制度の欠点には言及している。声明は、「目撃者の誤り、自白の強制、検察の職権乱用、人種間不平等、無能な弁護人、陪審員への不適切な説明、死刑にしないという陪審員の決定を覆す判事、自身の行った犯罪を理解する精神的能力に欠ける者の誤った収監」だと指摘している。
また、DNA判定によって覆された、誤った有罪判決の多さにも言及し、「極刑に対する考え方はそれぞれ違うものの、福音派キリスト教徒は刑事裁判制度を改善するよう一致して呼び掛けます」と述べている。
この声明では、福音派は「死刑に対する道徳的な反感や嫌悪は、反対する有効な理由ではないと考えています」と述べているが、死刑に反対する立場の強さを認めている。声明はモーセの律法の基準を引用し、「現代の米国の社会制度はその基準に達しているとは考えづらく、死刑犯罪の非常な深刻さを考慮した時、有罪判決後の再審無罪判決があまりにも多く、急速な改善を呼び掛けざるを得ません」とつづっている。
論評者たちは、福音派の中絶反対というプロライフの姿勢に照らし合わせ、死刑に対する歴史的な強い支持の矛盾を指摘してきた。
教皇フランシスコは米国を司牧訪問中、世界中での死刑廃止を呼び掛け、特に共謀して夫を殺害したとして死刑判決を受けたケリー・ギッセンダーナー元死刑囚の死刑執行を取りやめるよう当局に働き掛けていた。ギッセンダーナー元死刑囚は、9月30日に死刑を執行された。