自身のキリスト教信仰をもとに、同性カップルの婚姻証明書の発行を拒否したことで法廷侮辱罪に問われて収監されていた、米ケンタッキー州ローワン郡のキム・デービス書記官(49)が8日、釈放された。
共和党の大統領選候補者マイク・ハッカビー氏と弁護士の一人、マット・ステイバー氏に付き添われて収監施設の外に出たデービス書記官は、「私はただ、神に栄光を帰したいのです。神の民が集まってくださいました。皆さんは強い人々です。私たちは、私たち一人一人がどこにいるかを知っておられる生ける神に仕えています。神がここにいるので、前進し続け後退しないようにしましょう。神に誉れがありますように。皆さんを愛しています。とても感謝しています」と支援者に語った。
米連邦地方裁判所のデイビッド・バニング判事は同日午前、同性カップルの婚姻証明書の発行が拒否されないことを確認したとして、デービス書記官の釈放を命じた。
米ニュースサイト「デイリー・ビースト」によると、4日以降、デービス書記官が勤める郡書記官事務所は、同事務所が発行する婚姻証明書からデービス書記官の名前を消除した。バニング判事はそれを受け、命令書の中で「裁判所に対するデービス被告からの最大の侮辱は取り除かれた」と述べた。
命令書は、「2015年9月3日、連邦裁判所は、キム・デービス被告が6月26日の米連邦最高裁判決とその判決理由、また当裁判所によって8月12日に出された命令に反し、婚姻証明書の発行を直接的、また副書記官たちを通じて拒んだことを理由に、被告を法廷侮辱罪で告発し、収監した」と、デービス書記官を収監した理由について述べている。
命令書によると、デービス書記官の収監後、郡書記官事務所の6人の副書記官のうち5人が、裁判所の命令に従い法的に適格なカップルに婚姻証明書を発行することを宣誓した。そして、バニング判事は、郡書記官事務所が現在は法に従い同性カップルにも婚姻証明書を発行しているという報告を確認したとして、即座にデービス書記官を釈放すると述べた。
「2015年9月8日、原告らは裁判所の命令に対する報告書を確認した。報告書によると、原告らはローワン郡書記官事務所からの婚姻証明書を受けた。それ故、裁判所は、ローワン郡書記官事務所が米連邦最高裁判決と当裁判所の2015年8月12日の命令に従い、全ての法的に適格なカップルに婚姻証明書を発行する義務を全うしていることを確認した」
デービス書記官の釈放に伴い、裁判所は「デービス書記官は、直接的、間接的にかかわらず、いかなる方法によっても、副書記官たちが全ての法的に適格なカップルに婚姻証明書を発行する努力を妨害してはならない」と命令。妨害した場合、命令違反として「適切な処分を考慮する」としている。また、郡書記官事務所の5人の副書記官が命令に従っているかを確認するため、14日ごとの報告を義務付けた。
デービス書記官の収監は国民的な抗議を呼び、支援者たちは7日、バニング判事の自宅前と収監施設の前で抗議集会を開いた。
デービス書記官の弁護士の一人、ホラティオ・ミヘト氏は「彼女の気力は高く保たれています」「施設の外と国中で非常に多くの人たちが彼女のために祈っていると聞いて、涙を流しました」と語った。また、「(デービス書記官は)彼女自身だけではなく全ての信仰を持つ米国人の憲法上の権利を取り戻すために、どれだけでも収監されている意志があります」などと述べていた。