16世紀以来の長い外国支配から02年にようやく独立を勝ち取った東ティモール。しかし、その支配の歴史が人々の心と体に与えた傷は容易に消えることはない。
東ティモールで強姦や性奴隷などの被害を受けた女性たちの証言を紹介するパネル展「東ティモール戦争を生きぬいた女たち―日本軍とインドネシア支配の下で―」が、5日から兵庫県神戸市の神戸学生青年センターで始まった。
「私たちは動物のように扱われた。でも動物だって夜はやすむだろう。私たちにはそれすら許されなかった」「日本軍の兵士も母親から生まれたのだろうに、なぜ同じ女性にこんな扱いができるのだろうか」と、被害を受けた女性たちがパネルから訴えかける。
東ティモールの問題を巡っては、2000年の女性国際戦犯法廷をきっかけに日本と東ティモールのNGOによる聞き取り調査が始まった。今回の展示では、05年にに新たな合同調査を開始した、日本の東ティモール全国協議会と、現地の東ティモール人権協会の協力により、これまでの聞き取り資料、発掘資料が多数展示されている。
17日には、大阪大学外国語学部教授の松野明久氏を招き、「東ティモールの現在と今後―人権回復と政治状況を中心に―」と題した講演会を開催する。インドネシア・東ティモールの歴史、政治、社会を研究する専門家として東ティモールの未来への展望を伝える予定だ。
日本は第二次大戦中に3年半の間、東ティモールを占領し、全土で性奴隷制(慰安婦制)を展開したとされている。しかし、日本軍が行ったこれらの組織的な戦争犯罪について、日本政府は調査や謝罪、補償などを行おうとはしていないのが現状だ。その中で、東ティモールの女性達は、死が渦巻く戦火の中で体験した想像を絶する過去の現実を、勇気を持って証言し、告発し続けている。
パネル展は、Maluの会(日本軍占領期東ティモール性奴隷制に取り組む会)と、財団法人神戸学生青年センターの共催で、18日まで行われる。