東京・小岩にあるクリスチャン・スクール「シオン・クリスチャン国際学校」。開校してから初めてとなる卒業式が3月13日、隣接する単立・小岩四恩キリスト教会で行われた。卒業生は4人。同校のリンウッド・ガイ・ビッショプ校長は、「このような素晴らしい日が来るとは誰が想像できただろうか」と、1年を振り返り、感動に包まれた様子で語った。
「子どもたちの夢見る力を育てたい」。その思いで昨年開校した同校は、今回の卒業生も含め、現在小学生から高校生まで24人の子どもたちが学ぶ。他のフリースクールとの大きな違いは、聖書の教えを土台とした国際色豊かな教育を行っていることだ。米国、フィンランド、ペルー、ミャンマー、フィリピン、そして日本の子どもたちが学んでいる。
月曜から金曜まで、午前8時半から午後3時半まで行われる授業は、賛美で始まり賛美で終わる。また、毎日の時間割の中に聖書を学ぶ時間があり、毎週水曜は、学校全体での礼拝がもたれている。この礼拝では、外部から宣教師を招いてメッセージが取り次がれることもある。
同校が大切にするキーワードの一つは、「みんなでやる」こと。学年に関係なく、礼拝をはじめ、みんなで楽器を演奏して賛美し、食事やおやつを共にし、スポーツを一緒に楽しむ。そういう中で、互いに面倒を見るという関係が育まれているという。生徒に「学校の好きなところは?」と聞くと、「お姉さんやお兄さんと一緒にいられるところ」という答えがすぐに返ってくるとビッショプ校長は話す。
また、「ダメ」という言葉を使わない。これは、ビショップ校長自身の経験に基づく。4年前、ビショップ校長は米ロサンゼルスの名門大学・南カルフォニア大学大学院で修士号を取得した。しかし、これは通常ならばあり得ないことだったという。それまでの成績では、入学さえ無理な状況だった。だが、20年以上にわたる日本での活動が認められ入学が許可された。さらに通常の期間よりも早く学位を取得して卒業できたのだ。
日本では、学校のPTAや地域活動などさまざまなことに取り組んだが、苦労の連続で、妻からは「もうやめたほうがいい」と何度も言われた。それでも活動を続け、それが思わぬところで実を結ぶことになった。成績評価では「ダメ」と言われながらも、その「ダメ」に負けなかったことで、自分の夢をつぶさずに済んだのだ。
その経験から、子どもたちにも、「この学校に行くには準備が足りないから、こちらの入れそうな学校に」という選択ではなく、本当に進みたい道を選択させている。社会や学校から出される「ダメ」に基準を置かずに、神様に基準を合わせ、自分でできることは努力してみるように教えている。
またビッショプ校長は、「もちろん、学力を身に付けることも大事だが、知識・能力は一歩間違えれば人を傷つける武器を生み出すことにもなる。一番大切なのはそれらを入れる器」だと言う。
教室の中で子どもが起こすトラブルさえも、ビショップ校長は賜物だと明言する。「騒いで授業を妨害したり、落ち着きがなかったりするのは、そこに何かやりたいことのサインが隠されているはず。それを見つけてあげるのが教師の役割」だと話す。「どんな子どもも、何かをしたくて仕方ないと思っている」。教師たちには、そうした賜物をつぶさないよう訓練している。
今年卒業した4人も、入学時はそれぞれが問題を抱え、決して意気揚々としたスタートではなかった。それが、夏休みに行ったキャンプを境に大きく変化したという。同校のプログラムの一つに、「ディスティングイッシュト・レクチャラー(著名な講演者シリーズ)」というものがある。これは、4月にそれぞれが研究トッピクを決め、1年かけて調べ上げ、3月に研究発表を行うもの。こういったプログラムも子どもたちを大きく成長させた。
ビショップ校長は、卒業生4人を「勝利者」と表現する。卒業式での彼らの表情は、それまでの大変な道のりをみじんも感じさせない誇りと輝きに満ちていた。まるで、ダニエル書に登場する3人の若者が、燃え盛る炉に投げ込まれても、やけど一つ負うことなく出てきたのと同じようだと話す。
この1年、人手不足や予算の問題に阻まれ、実行できなかったこともたくさんあったという。しかし、大切なのは、他者の力に頼って大きなことをするのではなく、ありのままの人数で、神様に中身を見てもらうことだと、ビショップ校長は語る。そして、「神様が最も大切にしているのは建物や装飾品ではなく、子どもたち一人ひとりだ」と愛情を込めて語った。
今年の入学式は4月8日。卒業生4人を送り出したビショップ校長は、新しい子どもたちに出会える日を心から楽しみに、今から待ちきれない思いでいるようだ。