三浦綾子記念文学館(北海道旭川市)は、三浦文学に関連する展示物を全国各地で展示する「三浦文学全国移動展示事業」を2年に1度開催することを決定した。第1回目は、4月1日から来年3月31日までで、現在開催者の募集を行っている。
この事業は、パネルなどの同館の企画展・特別展の展示物と関連資料を貸し出し、それぞれの場所で展示してもらうというもの。同館で所蔵している資料、展示物を活用し、三浦作品や作家・三浦綾子の生涯を全国各地で紹介することにより、三浦文学への理解を深めることを目的としている。また、三浦文学の読者層を広げ、後世に伝えていくこと、さらに、地域の文化振興、社会教育、青少年育成、生涯学習への寄与という狙いもある。
各回テーマが決められることになっているが、初めてとなる今回のテーマは「終戦70年特別展 三浦綾子の描いた戦争」。『銃口』と『母』の2つの作品を対象にした展示となる。終戦70年を迎えるこの年に、平和をつくり出していくには、何を知る必要があるのか、何について考えていくべきなのかが伝わる内容だという。
三浦綾子自身、70年前の太平洋戦争時代に小学校教師をしていた経験を持つ。終戦により、それまでの国家のあり方が大きく変わったことで、子どもを教えていた教師としての挫折感を味わった。その苦悩と後悔が、三浦綾子の目を「戦争、昭和」というテーマに向かわせ、『銃口』と『母』を生み出させた。
『銃口』は、60人以上の罪のない教師が治安維持法違反として特別高等警察に捕らえられた、北海道綴方(つづりかた)教育連盟事件を題材にした小説。『母』は、プロレタリア文学作家の小林多喜二の母セキの語りを通して、息子が特別高等警察に捕らえられて受けたひどい拷問、またその死を浮き彫りにした小説だ。
具体的な展示内容の見本は次の通り。
『銃口』展
「筒先は国民に向けられた 勤勉な教師が警察に捕まる」
展示パネル:計9枚
資料(複写):創作ノート、新聞記事、関係者の手紙、文集、写真、書籍ほか
『母』展
「三浦綾子が描いた多喜二の母 セキは現代に何を語るか」
展示パネル:計8枚
資料(複写):創作ノート、新聞記事、セキが多喜二の死を悲しんで書いた文、雑誌記事ほか
さらに、▼三浦文学の解説および三浦綾子・光世を紹介する出版物などの貸出・販売、▼講師や朗読者などの派遣、▼書籍その他、もオプションとして利用することができるという。
三浦綾子読書会の協力を得て実施されるこの事業は、いつでも、どこでも、誰でも、簡単にそれぞれの住む場所で文学展を開催することができる。申し込みは、専用の申込用紙に必要事項を記入し同館まで。詳細・申込用紙のダウンロードはこちらから。問い合わせは、同館(電話:0166・69・2626、FAX:0166・69・2611)まで。