カナダ・トロントにあるライト・コリアン長老教会のヒョンス・リム牧師(60)が、1月末頃に北朝鮮に招かれ、首都平壌に到着してから間もなくして行方不明になっている。
リム氏は北朝鮮で、孤児院や老人ホーム、また麺類の材料となる穀物を育て製粉所で製粉するまでのフード・プロジェクトなどの活動に参加していた。このフード・プロジェクトの一部は、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の叔父、故張成沢(チャン・ソンテク)氏とスタッフ経由でつながりがあったという。
張氏は2013年12月、反逆罪で処刑された。体を引き裂かれ、複数の犬に食べられるという処刑をされたという推測も一部ではあるが、真偽は不明だ。
脱北者を支援する団体「デュリハナ」の責任者チュン・キウォン牧師はAFP通信の取材に対し、「私が知っている限り、リム氏は失踪する前の1月31日に平壌に来るよう依頼されたとのことです。私たちは、この平壌への招待が彼の張氏とのつながりと何か関係があるのではないかと心配しています」
北朝鮮の憲法は信教の自由をうたってはいるが、実際は全く自由はないといえる状況だ。北朝鮮のキリスト教徒は強制収容所へ連行されることを恐れ、信仰を厳重に秘密にし守っている。チュン氏は、リム氏が失踪したという情報は、北朝鮮で人道活動に参加している米国やカナダの朝鮮族の宣教師から聞いたという。
初めはエボラ出血熱対策のための標準的な21日間の隔離措置とみられていたが、その期間が終了しても何の連絡もなかったことで、リム氏の消息に対する恐れが広がっているという。
ライト・コリアン長老教会のリサ・パクさんは、地域紙「トロント・スター」の取材に、リム氏はこれまで数百回も北朝鮮を訪問していると述べた。
カナダ政府は国民に対し、北朝鮮に渡航しないよう勧告している。過去北朝鮮では、外国人宣教師が拘束されているが、多くの場合は国際的な仲裁のあとで釈放されている。