【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は5日、カトリック聖職者による児童性的虐待問題へのバチカンの対応を批判した国連「子どもの権利委員会」(本部ジュネーブ)の報告に関し、「人間の尊厳の教えと宗教の自由に対する干渉だ」と反論した。
バチカンのジュネーブ駐在国連オブザーバーであるシルバーノ・トマージ大司教が、報告書が公正でなく、問題があるとの見方を示した。
トマージ大司教はバチカン放送で5日、報告書が「子どもたちの保護に関する一連の変更を考慮に入れていない。これらの変更の度合いは、他の機関や他の国でさえ見受けられないほどだと私は思う」と述べ、聖職者による児童虐待の頻度は人口全体と比較すると少ないと付け加えた。
大司教は、委員会報告に「留意する」とし、精査する意向を示した一方で「児童の権利に関する条約」がうたう子どもの人権保護に尽力していると正当性を主張した。
報告書については、児童虐待を一掃する新たな取り組みが評価されておらず、事実を歪曲していると反論している。
また、国連の報告書が子ども保護の観点から中絶や避妊に反対する教会の姿勢を見直すべきだと提案したことを批判した。国連は妊娠した少女の生命や健康が危険にさらされているケースについて、中絶に対するバチカンの姿勢を見直すよう求めた。
大司教は、こういった提案が「カトリック教会の人間の尊厳に関する教義と、宗教的自由の実践に介入しようとする試みだ」と応答した。
バチカン広報事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父も7日、「国連とバチカンとの間の対立」を否定したが、報告書には聖座(バチカン)自体と、聖座が聖職者による性的虐待を根こそぎ明るみに出した経過についての理解が「決定的に」欠けている、と委員会を批判した。