ローマ教皇ベネディクト16世は6月30日、中国のカトリック信者に向けて送った書簡を公表し、法王庁と同国政府の間の対話と協調関係が具体的なものになることを期待するという、関係正常化に向けた意思を表明した。一方、同国との間で最大の問題となっている教皇による司教任命権に関しては、教会の一致のために「必要不可欠なもの」として説明し、これまでの主張を堅持した。同日、共同通信社が伝えた。
同通信によれば、教皇庁は補足説明書で、書簡は信徒宛のものであるが、「政府に宛てたメッセージでもある」と明言。バチカン側からの同国政府に対する明確な意思表明であることを示した。
書簡では、同国政府による活動制限について強い言葉で牽制(けんせい)し、司教任命権は教会側の「内政干渉」という、同国政府の主張に対しても政教分離の立場を強調した。
バチカンと中国の国交は、教皇庁が台湾を承認して以来断絶したまま。中国におけるカトリック教会は、政府公認の中国天主教愛国会と、非公認のいわゆる「地下教会」の2つが存在し、今回の発表によれば、合わせて800〜1200万人のカトリック信者がいるとされている。愛国会はこれまでに教皇庁の権威を否定し続け、教皇の承認なしに司教を任命してバチカン側からの反感を買った。一方、地下教会は教皇に対する忠誠心を持って、潜伏しながら活動している。書簡では、これらの信徒の苦労と犠牲をねぎらう言葉もみられた。
ベネディクト16世は、05年の教皇就任以来、中国政府との対話姿勢を前向きに進めてきている。しかし、地下教会の一部の信徒の中には、中国政府への歩み寄りに対して不安を抱く声もあるという。
朝日新聞が同日報じたところでは、書簡に対して中国外務省は同日、対話に向けた動きに期待を示す一方、バチカンと台湾の関係断絶を強く求め、「中国の内政に干渉してはならない」とコメントしている。