国際聖書フォーラム2007「聖書は語る」(日本聖書協会主催)が27〜28日、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催された。今年のフォーラムは外典、偽典がテーマ。外典・偽典に対する正しい知識を学び聖書の正典性や特徴をより深く知ってもらおうと、海外から著名な5人の教授を講師に招いて5つのセミナーを行った。各セミナーの定員は400人で、全てのセミナーでほぼ満員。2日間で延べ約2千人を動員した。
開会式で大宮溥・同協会理事長が挨拶。外典・偽典を読み、「聖書正典の深さと力を再認識しました」と自身の感想を語り、あくまでも聖書を正典とする同協会の立場を示したうえで、「(外典、偽典を扱う今回のフォーラムを通して)あらためて聖書信仰の信仰と思想とがどのような特徴を持っているかを知り、それによって聖書自体を深く学びたいと願っております」と述べた。また、渡部信・同協会総主事は、「今年は、聖書の正典性に焦点を当て、そのプロセスと同時に、新約改編に対する正しい知識の取得と情報提供の場を設けるために、海外から専門の先生方を5名お招き致しました」とフォーラムの趣旨を説明した。
講師として招かれたのは、リチャード・ボーカム氏(セント・アンドリューズ大学新約学教授)、フランソワ・ボヴァン氏(ハーバード大学神学部宗教史学教授)、キャロル・L・マイヤーズ氏(デューク大学宗教部教授)、マーヴィン・マイヤー氏(チャップマン大学聖書キリスト教学教授)、ウィリアム・L・ホラデイ氏(元アンドーバー・ニュートン神学校教授)。5人とも、世界的に著名な神学者、聖書研究者だ。
黙示録などヨハネ文書研究と終末論の専門家として知られるリチャード・ボーカム氏は「福音書の正典性」と題して講演。「外典福音書が有益である点をひとつ挙げるなら、それは四福音書をより良く理解するための助けとなることです」と述べ、四福音書の正典化への過程を「使徒の権威」に基づいて説明。四福音書がグノーシス福音書よりも時代的、思想的に先行しているものであるという考えを示した。その上で、グノーシス福音書が四福音書を前提としたものであり、四福音書に「付け加える」ことを目的としているものだと指摘した。
フィリポ伝、ステファノ伝説など使徒に関する新約外典研究に携わるフランソワ・ボヴァン氏は「使徒たちの記憶―新約聖書外典の役割とその教え―」と題し、過去に正典として認めなかった教会の価値感覚を尊重すべきとしながらも、外典行伝からも学ぶべき点が多いことを伝えた。また、聖書世界の女性研究における第一人者であるキャロル・L・マイヤーズ氏は、考古学、民族誌の研究からアプローチする形で、聖書ではほとんど記録されていない古代イスラエルの女性の生活、役割について講演。さらに、新改訂標準訳(NRSV)翻訳委員の1人であるウィリアム・L・ホラデイ氏は、歴史家、また信仰者としての2つの視点をもって、2700年以上前のイザヤによる言葉と現代のキリスト者の信仰の関係を伝えた。
また様々な反響を呼んだ『原典ユダの福音書』、『イエスが愛した聖女』(日経ナショナルジオグラフィック社)の著者の一人であるマーヴィン・マイヤー氏は、「初期キリスト教文献で隅に追いやられた弟子たちの復権―疑り深いトマス、マグダラのマリア、イスカリオテのユダ」と題して講演。キリスト教の伝統の仲では隅に追いやられてきたとされるトマス、マリア、ユダが、「グノーシス主義的な」福音書でどのように名誉回復されているかを解説した。
最後は、「神の言葉はみな真実である。神は彼により頼む者の盾である。その言葉に付け加えてはならない。彼があなたを責め、あなたを偽り者とされないためだ」(箴言30:5〜6)と渡部総主事が聖句を拝読し、第2回目の国際聖書フォーラムの幕を閉じた。
渡部総主事は集会後、本紙の取材に応じ、「みなさん、聖書に関する知識に対して要望が強いということを感じました」とフォーラムを終えての感想を述べた。また、世界各地から著名な講師を招いてのセミナーは教会、教派単位では難しいことを挙げ、「日本聖書協会の使命として理にかなったセミナーだったのでは」と語った。
来年の国際聖書フォーラムでは、聖書翻訳がテーマとなる予定。また、今回の各セミナーの内容は「聖書は語る。国際聖書フォーラム2007講義録」(A5版、税込1800円、9月発行予定)として販売される。予約申込、問い合わせは、財団法人日本聖書協会(電話:03・3567・1987、FAX:03・3567・4451)まで。