【CJC=東京】中国当局が上海の天主教(カトリック)神学校2校を、新学期が始まったにも関わらず閉校させたままにしており、また高齢の修道女を解任したことが明らかになった。カトリック通信『UCAN』が報じた。
公認教会「天主教愛国会」のアロイジウス・ジン・ルシャン補佐司教(96)がこのほど「シャーシャン大神学校」と「泰来橋小神学校」に対し、「現状」を理由に「新たな通告」を出すまで授業を延期する、と通告した。
天主教愛国会は中国政府から、中国のカトリック教会を監督するために用いられている。一方、いわゆる「地下教会」は教皇首位権を受け入れている。両者間には相当程度の「重なり」があるが、司教任命に関しては常に最高決定権を巡り対立がある。
政府と上海のカトリック教会の関係は、タデウス・馬達欽(マ・ダキン)補佐司教が7月7日、愛国会に属すことは自分の宣教と相容れないと発表してから「危険領域」に入っている。政府は同司教をその時以来、シャーシャン神学校に軟禁している。授業は9月半ばに始まることになっており、マ司教はジン司教の補佐、将来の後継者として仕えることになっていた。
ジン司教の声明は、愛国会が「奉献の聖母修道女会」総長のアグネス・リュー・シュジン修道女を解任するとの通知を発表した数日後に出されている。修道女会は、会員86人全員に同修道女が指導することになっていた1週間の訓練コースを中止した。解任について公式な説明はないが、リュー修道女は、地方当局の再三の喚問に「非協力的」だったと言われる。
馬司教の叙階式典に、バチカン(ローマ教皇庁)が承認していない司教が参列したことで、修道女多数が参加しなかった。当局はそのことでリュー修道女を査問しようとしたもの。複数の情報筋によると、リュー修道女は、7月7日の叙階に参列するようにとの指示を出すのを遅らせていた。
馬司教を神学校で見かけた情報筋は、『アジア・ニュース』に、同司教が司教服の着用をまだ認められていなかった、と語った。
バチカンは、神学校閉鎖にもリュー修道女解任についてもコメントを公表していない。馬司教の叙階を歓迎したものの愛国会からの辞任についても論評していない。
一方、教皇べネディクト16世は、8月22日、88歳で死去した台湾のパウロ・シャン・クオシ枢機卿(イエズス会)の「奉仕」を称賛した。同枢機卿は教会に対する中国政府の監督への反対を続けてきた。
同氏は1987年から2005年にかけて中国地区教会会議の会長を5期務めた。教皇ヨハネ・パウロ2世に中国の殉教者多数の列聖を働き掛け、故教皇は2000年に、中国政府の意向に反して列聖を行った。
香港の引退司教ヨセフ・陳日君枢機卿はアジア・ニュースに、シャン枢機卿が今年初め、中国政府から本土訪問を許可されており兄弟、友人、上海のジン司教との会見が予定されていたが、北京訪問も要請されたことで、それが「政治目的のための手段であったことは確か」と語っている。ジン司教は北京行きを断り、本土訪問も実現しなかった。