私の先輩のMさんは、とても豪快な弁護士である。毎日、朝から晩まで「ワッハッハッハ!」と大声で笑っている。事務所でも、弁護士会館でも、裁判所の廊下でも、M弁護士がいる時はいつも、彼の大きな笑い声が聞こえる。
ある時、私の後輩の弁護士Aさんが真っ青になって、私の事務所を訪ねてきた。「大変なことになってしまいました。ある事件で相手方と交渉しているうちに、うっかりして、自分の依頼者の権利の時効期間が過ぎてしまったのです。一体どうしたらよいのでしょうか?」と言う。
裁判で相手が時効を主張すれば、こちらは完全に敗訴してしまう。敗訴すれば、依頼者が損害を受けるだけでなく、弁護士としての自分の責任も追及されかねない。まじめで誠実なA弁護士は、深刻に悩んでいた。
私は名案を思いつかず、先輩のM弁護士に相談した。M弁護士はその話を聞いた途端に笑い出した。「ワッハッハッハ! これは面白い! 弁護士がよくこんな初歩的なミスをしたもんだ。これは新聞の載るような特ダネだよ。ワッハッハッハ!」
同席したA弁護士があっけにとられていると、M弁護士はその場で、事件の相手方の弁護士Bさんに電話した。「ワッハッハッハ! B先生、今面白い話を聞いたんですよ。弁護士が、係争中の債権の消滅時効を忘れたらしいんですよ。実にこっけいですね。ワッハッハッハ!」と大笑いしている。
B弁護士はつられて返事をした。「ワッハッハッハ! それは面白い。そんな弁護士がいるんですね。でも、もし自分がそんな立場にたったら笑えませんよね!」
M弁護士はすかさず、「その弁護士というのが、あなたの相手方のA先生なんですよ。かわいそうだから時効なんか主張しないで、正々堂々と実質的な法律論で争ったらいかがですか、ワッハッハッハ!」と笑い飛ばした。
M弁護士の笑いに押されて、B弁護士は自分の依頼者と相談して、時効を主張せずに争うことにした。最終的には裁判にならずに、両当事者の納得のゆく和解が成立した。
実は、M弁護士は生まれつき非常に気まじめな性格で、学生のころ強度のノイローゼになり、精神科医に通ったことがある。いくら治療しても治らないMさんに対して、医師は最後の処方箋を渡した。「あなたは何でも深刻に考えすぎます。薬ではなかなか治りません。いちばん良い治療法は、どんな物事の中にも面白いことを見つけて笑うことです」。Mさんはこれを忠実に実行し、無理にでも笑う習慣を身につけて、「笑いのプロ」になった。
後に弁護士会の会長になったM弁護士は、クリスチャンではないが、聖書を愛読書とし座右の銘としている。「毎晩寝る前に聖書を読むと、なぜか心が落ち着くんだ」と言っている。
聖書には、「陽気な心は健康を良くし、陰気な心は身を枯らす」(箴言17:22)とある。「笑いは百薬の長」と言われ、「笑う門には福来る」とも言われている。
秘訣は、「いつも主にあって喜ぶ」(ピリピ4:4)ことである。イエスとの絶えざる交わりによって、「全能の愛の神は、どんな問題でも解決してくださる!」、「イエスこそが、あらゆる問題の解決である!」という確信が生み出されてくる。こうして、私たちは問題を笑い飛ばすことができるようになる。
万物の創造主の前に、問題や障害の存在は、何の力もない。かえって、父なる神は、それらを人間の益になるようにしてくださる。(ローマの信徒への手紙、8:28)
だから、人間を愛する神は、三つのことを人間に求めている。
① いつも喜んでいること。
② 絶えず祈ること。
③ すべてのことに感謝すること。
(テサロニケの信徒への第一の手紙、5:16ー18)
だが、人間を憎むサタンは、三つのことを人間に求めている。
① いつも落ち込んでいること。
② 絶えず恨むこと。
③ すべてのことに不平を言うこと。
(「一生感謝」 ジョン・クゥアン著 小牧者出版 より引用)
神の求めに応じるのか、それとも、サタンの求めに応じるのか。それは、各々の人の選択である。
佐々木満男(ささき・みつお)
国際弁護士。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。インターナショナルVIPクラブ(東京大学)顧問、ラブ・クリエーション(創造科学普及運動)会長。
■外部リンク:【ブログ】アブラハムささきの「ドントウォリー!」