1981年当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が、広島の地で「戦争は人間の仕業です。戦争は人間の生命の破壊です。戦争は死です」と 訴えた。この広島での平和アピールに応じて、日本のカトリック司教団が平和旬間を定めた。同司教団によって、広島に原爆が投下された8月6日から、8月9日の長崎の原爆投下をはさんで、太平洋戦争敗戦に至る8月15日までの10日間が、とりわけ平和のために祈り、平和について学び、行動する期間として定められている。
期間中は11日の麹町教会で内藤新吾牧師による「命と平和の観点から原発を問う」と題した講演会を皮切りに、カテドラル関口教会で平和巡礼ウォーク、平和を願うミサ、主日の12日には茂原教会で三田一郎終身助祭による「原子力と平和」と題した講演会、調布教会で幸田和生司教による「平和―未来への責任―」と題した講演会が行われる。12日は碑文谷教会でテゼの祈り、聖体行列が行われ、最終日の15日には吉祥寺教会で平和巡礼ウォークが行われる。
2012年平和旬間に際して、日本カトリック司教協議会会長の大阪教区大司教池長潤氏は、「平和への道は命を尊び大切にする道」と題した会長談話を発表した。
談話の中で、ヨハネ・パウロ2世の「平和アピール」について振り返られており、「教皇は、『この地上の生命を尊ぶ者は、政府や、経済・社会の指導者たちが下す各種の決定が、自己の利益という狭い観点からではなく、『平和のために何が必要かを考慮してなされる』よう要請しなくてはなりません。目標はつねに平和でなければなりません。…平和への道のみが、平等、正義、隣人愛を遠くの夢ではなく、現実のものとする道なのです」と呼びかけていたことを明かし、「平和への道はあくまでも命を尊び大切にする道なのです」と伝えられた。
また東日本大震災に関して、「日本のカトリック教会はもちろんのこと、全世界が被災地に心を向け、命を愛おしみ平和への道を歩む人々の大きなうねりが起こったのでした。現状を見ても、この先、持続的な支援が必要ですが、このうねりが被災地の一日も早い復興へとつながるように願ってやみません」と伝えられた。
日本のカトリック司教団は、昨年11月に「いますぐ原発の廃止を~福島第1原発事故という悲劇的な災害を前にして~」というメッセージを発表しており、その中で「なによりまず、わたしたち人間は神の被造物であるすべてのいのち、自然を守り、子孫により安全で安心できる環境をわたす責任があります。利益や効率を優先する経済至上主義ではなく、尊いいのち、美しい自然を守るために原発の廃止をいますぐ決断しなければなりません」と訴えていた。
公開された談話では、「しかし福島第1原発については、その事故原因の究明もされず、廃炉の目途もたっていません。また放射性廃棄物や核兵器の材料となりうるプルトニウムの問題、それらの保管や処理の問題を後の世代に押し付けるなどの問題が山積みしています。このような中で政府が大飯原発の再稼働に踏み切ったことは誠に遺憾であります」と伝えられた。
日本カトリック司教協議会は、「あらためてすべての原発の即時廃止を訴え、命を守り平和を追求する社会をつくるために尽力しましょう。平和への道はあくまで命を尊び大切にする道なのですから」とメッセージの中で訴えた。平和旬間についての詳細はこちら。