在日朝鮮人の朝鮮史・キリスト教史研究者であった故韓皙曦(ハン・ソッキ)さんが自身の研究のために集めた朝鮮史、キリスト教関係の文献などの私財によって設立した「青丘(せいきゅう)文庫」の設立35周年と神戸市立中央図書館(神戸市中央区)移転10周年を記念する講演会が10日、同館で行われた。
地元新聞でも取り上げられたために一般市民も多く参加し、同文庫主催の研究会関係者や留学生らあわせて約60人が集まった。会場では、朝鮮史研究家の姜在彦(カン・ジェオン)さんが「朝鮮史研究と青丘文庫―韓皙曦さんと青丘文庫設立のころ」を、京都大学の水野直樹教授(朝鮮近代史・東アジア関係史)が「青丘文庫所蔵資料と青丘文庫研究会」を講演した。
設立当初から顧問役として同文庫に携わってきた姜さんは、図書の選定などで苦労した35年前の設立当時の様子を振り返った。学生の頃から同文庫を利用し、現在、研究会代表をつとめる水野教授は、同文庫の図書が体系的に集められたものであり、その価値が非常に高いことを解説した。この日、広く一般の人々にも国内有数の朝鮮史関係資料を所蔵する同文庫を知ってもらおうと見学会が行われ、約30人が参加した。
青丘文庫は、69年当時、朝鮮関係の文献が公立図書館や大学図書館などでもない状態であったことから、韓さん自ら収集を始めたのがきっかけで始まった。名称の「青丘」は朝鮮半島を示す古くからの雅号。72年、書籍が韓さんの自宅から神戸市内のビルに移転し、私立図書館「青丘文庫」が設立された。文献は阪神・淡路大震災の翌96年に韓さんが神戸市へ寄贈。97年から市立図書館内の1つのコーナーとして扱われるようになった。朝鮮の近現代史を中心に、南北朝鮮で発行された文献、在日朝鮮人に関する文献など約3万点が所蔵されている。
研究会は、毎月2つ行われている。「朝鮮近現代史研究会」は次回、開催250回目を迎え、「在日朝鮮人運動史研究会関西部会」はすでに290回を超えた。ともに歴史ある研究会だ。青丘文庫、各研究会に関する詳細は下記のとおり。
■ 青丘文庫 ■
住所:兵庫県神戸市中央区楠町7‐2‐1 神戸市立中央図書館2号館特別コレクション室内
(神戸地下鉄大倉山駅下車すぐ、JR神戸駅下車徒歩約10分)
電話:078・371・3351
ホームページ:http://www.ksyc.jp/sb/index.html
■ 研究会 ■
? 在日朝鮮人運動史研究会関西部会(代表:飛田雄一)
? 朝鮮近現代史研究会(代表:水野直樹)
原則、毎月第2日曜日13〜17時に神戸市立中央図書館内の研究室で開催。問い合わせは、財団法人・神戸学生青年センター、飛田雄一(電話:078・851・2760、[email protected])まで。