アフリカにおけるエキュメニカルHIV、エイズイニシアチブ(EHAIA)は最近、2002年以来に達成してきたHIV、エイズ撲滅運動の成果をまとめた文書を発表した。
アフリカにおける超教派によるHIV、エイズ撲滅運動10周年を記念する一方で、EHAIAはどのように諸教会が「HIV問題に適切に対処できる」ようになることができるか、HIVに関する情報を収集し、HIV陽性反応の出た人々を友として歓迎し、アフリカその他各国のHIV、エイズ撲滅運動を続けていけるかについても文書の中で見解を記した。
これまでアフリカの数千もの教会指導者らが、EHAIAスタッフによってHIV、エイズ撲滅運動や陽性反応の出た人をどのように教会に迎えるかの訓練を受けてきた。中央アフリカだけでも10カ所のHIVに関する神学教育機関があり、EHAIAのイニシアチブをサポートする体制をとっているという。過去10年間だけでもEHAIAスタッフによって、HIVに関して書かれた数冊の神学書が出版されており、世界中で使用されている。
HIV、エイズ撲滅運動に関する革新的なアプローチによって、これまでタブーとされてきた性的な問題、男女の関係や、それにかかわる暴力問題、その他教会で扱うにはデリケートにならざるを得ない問題に関してEHAIAは果敢に取り組んできた。
EHAIAでは第2サムエル記13章に出て来るタマルの話を引用し、姦淫に関する問題について、それぞれの社会的背景と照らし合わせてどのように考えるか考察させるテキストも作成している。
EHAIAでは、エイズ問題において、問題の行動をなす男性をただ単に「犯罪者」として見なすのではなく、そのような行動をなす男性が、本来どのような役割を果たすべきかを議論できる安全な場所を形成する必要があるとしている。
エイズ問題の背景には、男性の家族の問題、父親との関係性、家族生活の中における女性との関わりなどが隠れているという。そのためEHAIAではエイズ問題に関するいくつかの男性向けワークショップも開催している。
アフリカ南部の国レソトでは、刑務所に収容されている男性を対象にしたトレーニングも開催しており、囚人となっている男性が異なる見方や振る舞いができるように導いているという。
このようなEHAIAのアフリカでの活動が過去10年間でアフリカ以外の国々にも広まるようになっていった。世界各国にEHAIAスタッフが招かれ、これまでの経験を証しする機会が増えるようになっているという。
EHAIAの神学コンサルタントで大学教授のエズラ・チタンド氏は、ノルウェーのオスロ大学に招かれ、男性向けワークショップに関する講演会を開催した。ノルウェーの講演会で、ノルウェー国内で同様の問題にEHAIAの出版物を参考にしながら取り組んでいる学生たちに出会う機会も形成されたという。EHAIAのHIV問題に関する神学的見解に基づくカリキュラムは、インドやジャマイカでも適用されてきた。
今年に1月にはドイツで国際キリスト教団体「世界にパンを」によってHIV、ジェンダー、家庭内暴力問題を克服するためのセミナーが開催された。同セミナーにおいても、「タマル」の話を引用したEHAIAによるアプローチ法が説明されたという。トレーニングには30人ほどの参加者が募り、第2サムエル記の聖書の言葉を黙想し、HIV問題がそれぞれの共同体にどのように影響するか議論がなされた。さらにEHAIAのアプローチが他の組織やネットワークに伝わるための方法について議論がなされた。
昨年12月にはフィンランドヘルシンキで開催された世界エイズデーのイベントのゲストスピーカーとしてEHAIA中央アフリカ地域コーディネーターのヘンドリュー・ルセイ氏が招かれた。他にも昨年5月にジャマイカで開催された国際エキュメニカル平和会議(IEPC)では、EHAIAの神学コンサルタントのチャールズ・クラグバ博士が聖書的見解に基づいたエイズ問題と諸教会の対応の仕方に関するプレゼンテーションを行った。
アジアキリスト教協議会(CCA)も「HIV問題に対応できる諸教会へ~神に召され、癒しと和解へ」という本を出版してアジアのエイズ問題に関わっている。2013年に韓国釜山で行われる第10回WCC総会では、EHAIAはアジア諸教会および世界の諸教会に対し、HIV問題、ジェンダー、その他性問題に対して積極的に取り組んでいく呼び掛けと行う予定である。EHAIAのこれまで10年間の活動の成果から、今後活動の成果をより多くの世界諸教会、諸宗教、その他社会活動団体に広めていこうとしている。