米オープンドアーズCEOのカール・モエラー氏は米CPに対し、キリスト教徒への迫害レベルの深刻さにもかかわらず、迫害各国での福音の土壌は固く形成されていることを伝えた。
ウォッチリストは迫害各国のフィールドワーカー、迫害されている信徒、および現地の人々に宗教の自由に関する具体的な質問をしながら行った調査を基に作成されている。今年度の報告書ではイスラム教徒が大多数を占める各国においてキリスト教徒数が大きく増加していること、キリスト教の福音が予期しない場所で広まっていることが示された。
今年度のウォッチリストでは、北朝鮮が10年連続でキリスト教迫害国第一位にランクインされた。オープン・ドアーズによると、悪名高い北朝鮮強制収容所には5万人から7万人程のキリスト教徒が収容されていると推定されているという。北朝鮮強制収容所は劣悪な環境で有名であるが、キリスト教徒の収容者は他の収容者よりもさらに残酷な扱いを受けることで知られている。オープン・ドアーズは北朝鮮新指導者の金正恩氏は同国でキリスト教共同体を排除するための政策を引き継いでいくものと見ている。
その他キリスト教迫害国は第2位から11位までがイスラム教国が占めており、アフガニスタン、サウジアラビア、ソマリア、イラン、モルジブ、ウズベキスタン、イエメン、イラク、パキスタンとなっている。イラクとアフガニスタンは特に今年から駐在米軍が撤退することによる、国内でのキリスト教迫害状況が懸念されている。
モエラー氏は、「残念なことにイラクとアフガニスタンのキリスト教徒の状況はより深刻になると危惧されています。アフガニスタンとイラク復興に米軍が関わったことによる悲劇のひとつとして、イラクとアフガニスタンの解放のために駐在した米軍が撤退するにあたって、これまでに米国民の数十億ドルの血税が使われ、現地に派遣された多数の負傷した兵士や犠牲者を出してしまったことです」と述べた。
モエラー氏は、それにもかかわらずアフガニスタンとイラクの宗教自由度は10年前よりも深刻な状況になっていることに遺憾の意を表し、「イラクとアフガニスタンのキリスト教徒を取り巻く状況は米軍撤退後の短期間で著しく悪化してしまうことを懸念しています」と述べた。
ナイジェリアとスーダンでも昨年キリスト教に対する迫害が著しく悪化した。ナイジェリアは前年度の23位から13位に、スーダンは35位から16位にそれぞれ浮上している。
モエラー氏には、これらの国々ではキリスト教教会への規制が強化されており、ナイジェリアはキリスト教徒がもっとも暴力を受けやすい国の一国であると指摘し、「北アフリカとサハラ以南のアフリカを二分するナイジェリアを横切る地域がキリスト教徒に対するイスラム教徒の暴力が勃発するボーダーラインになっています」と述べた。ナイジェリアは、昨年一年間で300人もの殉教者が生じた。スーダンでは誘拐や教会の運営資金の縮小化によってキリスト教徒の活動が妨げられている。
エジプトも昨年2月にムバラク大統領が追放されて以来キリスト教徒への迫害が深刻化している。「アラブの春」を迎えている中東各国の中でも最もキリスト教徒への迫害が懸念されている。イスラム教の政党がエジプト議会議席の大半を占めることで、エジプト国内でのキリスト教徒を取り巻く環境がさらに悪化することが懸念されている。
モエラー氏によると、中東域のキリスト教共同体にとっての最大の脅威は、シャリア法を国内の政治に適用し、キリスト教徒を撲滅することがコーランの教えであると解釈するイスラム教急進派の動きであるという。モエラー氏は「これらの国々の政府はイスラム教急進派勢力とより一層肩を並べるようになっています。そのためより多くの中東各国政府がキリスト教共同体への迫害や規制を強めるようになっています」と述べている。
一方中国や北朝鮮、イスラム教諸国などキリスト教が最も迫害されている国々の全てにおいて、教会の成長と福音伝道の拡大が見られるというパラドックスが生じているという。これらのキリスト教迫害諸国に存在する既存の教会ではとてつもない暴力に苦しんでいるものの、地下教会の活動はそれぞれの国々で高まっており、これらの国々の地下教会に所属するキリスト教徒らは、身の危険を感じながらも信仰を保ち続けているという。
モエラー氏は「キリスト教共同体の第四の流れとして中東諸国の地下教会の活動が挙げられます。中東諸国で霊性を成長させることのできない空洞の中に置かれた男女が、イエス・キリストの信仰に改宗し、死に直面する危険があるにもかかわらず、信仰を保ち続けています。このような信仰を保ち続ける活動が持続されているのは、聖霊の働きが生じているとしか言いようがありません」と述べている。