ドイツ出身の「カメラマン宣教師」スーザン・チィルダースさん(YWAMフォトジェニクス(photogenX)共同リーダー)が19日、VIPクロスカルチャー・コンセプト5月例会で講演し、人権侵害、人身売買、児童買春、ドメスティックバイオレンスといった女性や子どもに対する差別と抑圧、虐待が日常化している世界各地の現状を伝えた。チィルダースさんは会場に集まった80人の参加者に、自分たちでは声をあげることのできない人々の「声」に「祈り」で応えてほしいと呼びかけた。
プロの写真家として活動していたチィルダースさんはあるとき、マレーシアの首都クアラルンプールで開催された女性問題に関する世界的なミッションカンファレンスに参加し、世界で起こっている女性差別の信じられない現実を目の当たりにした。
「何かをしなくてはならない」と、とっさに祈りをささげたチィルダースさんのこころに、カンファレンスで歌った最後の曲の歌詞が響いてきた。「声をあげられないもののために、私は声をあげる」――祈りの答えは自分自身だと気づいていた。しかし、いったいどうすれば良いのか、答えが見つからないでいた。
二ヶ月悩んだ末、女性たちが一番苦しんでいる地域に行こうと北アフリカへ旅立った。目的は現地に住む女性たちを写真に収めること。だが、現実は想像以上に厳しかった。女性達は男性にあたかも所有物のように扱われ、家の中に閉じ込められたまま自分で外に出ることさえできなかった。どこかに行くにも必ず主人と一緒。顔には覆いがかかり、表情を見ることさえできない。チィルダースさんは当初、撮影を断念しようとしていた。
しかし、ナイジェリアのある村を訪れたときのこと。現地の人々との交わりの中でついに女性を撮影する機会がやってきた。女性たちはとても美しい目をしていた。だが撮影はできなかった。みな撮ろうとすると逃げてしまう。これまでに誰も自分が写真に撮られたことがなかったからだ。「なぜ私たちの写真を撮るのですか」と尋ねる現地の女性たちにチィルダースさんは、ただ「あなたが本当に素敵ですから」と伝えた。
チィルダースさんは講演で、主にアフリカを中心に今なお行われている女子割礼(女性器切除)を受けた女性たちの深刻な現実を伝えた。スーダン、ソマリア、エルトリアでは、9割以上の女性がいまもなおこの被害を受けている。コーランの中に「女性は割礼を受けなければならない」と書かれてあると信じる(本当はどこにも書かれていない)現地の人々が、間違った行為を正しいものとして今に至るまで受け継いでいるという。その中で、女性は声も上げられない。「国の伝統」――ただこの一言で片付けられ、これまでだれもこの儀式に疑問を投げかける「声」を持たなかった。
また人身売買についても、「人身売買は世界における大きな商売になっています。人身売買される80%は女性。1000万人の子どもたちが性産業の被害者になっています」と被害の大きさを伝えた。「これは単なる統計の数ではありません。いま、この現在、その人々が生きています。これらの『声』が神さまに叫び求めています」と会場に訴え、この瞬間も「声なきものの声」が世界の片隅から救いを求めていることを知らせた。
モーセを民の中から選び出した神は、モーセが牧羊のために普段から使用していた杖を用いて海を分け、岩から水を湧き出させるなどの神の業を示した。チィルダースさんは、「あなたの情熱かもしれない。立場かもしれない。賜物かも知れません。皆さんにはこれが与えられたものだという何かがあるでしょう。全員何かを持っています」と述べ、神は、一人ひとりに「すでに」与えているものを用いて、救いの御業をなさることを説いた。
最後にチィルダースさんは、「このような問題を変えるために、何が出来るのでしょうか。それは『祈る』ということです」と語り、これまでに自身が撮影した写真を収録し、具体的な祈りを記した小冊子「30日間の祈りの小冊子」を紹介した。これまでに十万冊を発行したが、日本語版が2番目の翻訳だという。「この冊子を読む十万人のうちの十分の一が何かを起こしたのなら、本当に素晴らしいことが起こると思います。十万人の中の一人になって欲しい」「一日5分、10分でも構わないから関心をもって欲しい」と切実に訴え、「ここにいる日本人が声なきものの声に答えを返してくれたらこれほど嬉しいことはない」と期待を示した。