世界的に著名な理論物理学者であるスティーブン・ホーキング博士は、英ガーディアン紙のインタビューに応じ、「天国はない、死後の世界は作り話である」と述べた。科学者と信仰者の間隙があらためて露わとなる見解が示されることとなった。
ホーキング博士は21歳のとき筋萎縮性側索硬化症を発症した。本来であれば早期に死に至る病気であるが、ホーキング博士の病状は途中で進行が急速に弱まり、車いす生活をしながらも健在し、理論物理学・宇宙論で著名な功績を残してきた。同氏は死に対して恐れを抱いてはいないとし、「私は脳というのはその構成要素が欠損するときその働きを停止するコンピューターであると見なしています。コンピューターが故障した後に天国や死後の世界などあるはずがありません。闇を恐れる人々による作り話にすぎないでしょう」と述べ、死後の世界の存在を否定した。
同氏は2010年に『ザ・グランドデザイン』という著書を出版し「宇宙の創造に神の手は必要としない」と著書の中で主張している。同氏は宇宙というものは科学を通して説明され得るものであるという。理神論者のホーキング博士は、宇宙と人類は偶然と自然発生的に生じた創造により形成されてきたと信じている。人格を持たない神が、ただ物質が存在する理由付けの証拠のためだけに存在していると見なしている。
これに対し、宇宙物理学博士で信仰をもつ理由について研究しているジェフェリー・ズェーリンク博士は「ホーキング博士の考えの根本的な欠陥は神は人格を持たないのに、私たち人類は人格を持っていると考えているところにあります。私たちの中には精神があり、霊が存在しています。そして人類の精神の発展を受け継いで存在しています。もし私たちが私たちの精神や物理法則よりも劣る完全に非人格的な魂から人格を与えられたとしたら、なぜ非人格的なものが人格というより優れたものをつくり出すことができるのでしょうか」と反論している。
ホーキング博士は1988年の著書『ホーキング、宇宙を語る』が世界的ベストセラーとなり、「アインシュタインの再来」とされ一躍有名となった。宇宙創造・宇宙構造や時間軸、空間やブラックホールの存在について実証主義に基づいた宇宙物理学による説明を展開している。