イスラム教徒が大半を占めるマレーシアにおいてキリスト教との対立関係に緊張感が見られている。イスラム教国であるマレーシア国内では、キリスト教の教会指導者らが同国をキリスト教国にしようと陰謀しているとの告発が同国与党紙からなされている。
同国において、マレーシア与党による日刊紙ウツサン・マレーシア(Utusan Malaysia)の一面に、二つのブログに書かれたキリスト教教会指導者らのマレーシアキリスト教化への陰謀に関する記事が掲載された。同紙では、キリスト教指導者らがマレーシアペナン州の林冠英主席大臣とともに夕食会に参加し、キリスト教をマレーシアの国教とするための議論を行ったと報じている。
林冠英主席大臣は同紙の報道を否定しており、同氏の所属するマレーシア民主行動党は同紙を告訴している。同大臣は「我々はマレーシアがキリスト教国、ヒンズー教国、仏教国になるように要求したことは一度もない」と述べている。
同大臣とキリスト教指導者らとの夕食会は国家福音キリスト者フェローシップ、グローバル・デー・オブ・プレイヤー(GDOP)、マーケットプレイス・ペナンおよびペナン牧師フェローシップによって主催された。主催者らによると、夕食会では政治汚職の問題やわいろの問題について話し合われただけで、マレーシアにおけるキリスト教の立ち位置については話し合われていないという。
マレーシアの英字日刊紙「ザ・スター」によると「ペナン州のキリスト教共同体は事実無根の主張によって活動に支障を与えられている」と報じている。ウツサン・マレーシア紙による報道の真偽については、同紙が「敏感な問題において真実を伝える役割を果たしているかどうか」に焦点を当てて同国警察による調査が行われているという。
イスラム教徒が大半を占めるマレーシアにおいて、10パーセントを占めるキリスト教徒との緊張関係が続いている。ダトゥ・セリ・ヒシャムディン・フセイン内務相によると、「マレーシアは神聖なイスラム教国であり、疑われる余地のないことである」と述べている。
なおカトリック教会が発行する週刊英字紙『ヘラルド』編集者のローレンス・アンドリュー神父はバチカン放送において「この問題で内務相が動くのはふさわしいことではありません。キリスト教指導者らがマレーシアをキリスト教国にしようとしているという主張は、ただイスラム教国であるマレーシア政府がイスラム教徒からの支持率を回復させるために議論を巻き起こそうとしているだけです。彼らはイスラム教徒の支持者を失いつつあると感じています。支持率低下を受け、何か混乱を巻き起こし、国民に不安を与えることで国民の目を再度引きつけようとしているのでしょう」と述べている。