キリスト教主義の社団法人・好善社(理事長:棟居勇牧師)が7月8日「ハンセン病を正しく理解する講演会2006」を日本キリスト教会西宮中央教会(兵庫県西宮市)で開催した。参加者は80人。
講師の曾我野一美氏(79)は、国立療養所大島青松園入所者で全国ハンセン病療養所入所者協議会や国家賠償請求訴訟原告協議会会長として、常に先頭に立ち人権回復運動に携わってきた。
講演で曽我氏は「40年間の闘いの原点は、『人間として扱ってもらうことを法律にしてほしい』との強い願いがあったから頑張れた」と語った。また、「ハンセン病になったことによって死と対決したが、死に切れなかった。その延長線上に私の生命と宗教(信仰)がある」と自らの信仰の証しをした。しかし、その反面「故郷の墓参りをするが、隠れて行く。それが正しいかどうかが問われるが、『迷惑をかけたくない』という思いがいつもある」と現在も続くつらい胸の内を語った。「強制隔離をした国の政策には断固反対。しかし、国のお世話にならなければ今日まで生きることは出来なかったことも事実」とも語った。
ハンセン病は感染・発症すると末梢神経がおかされ、皮膚症状が進むと身体に変形が生じることもあるが、重篤な病状には至らない。また、ライ菌の感染力は極めて弱く、感染しても発症するのは稀だ。以前は、不治の病とされていたが、現在は新薬や治療法も開発され完治できる病である。
しかし、以前ハンセン病への間違った知識の故にハンセン病と判明した患者は、厳しい差別と偏見を体験しなければならなかった。強制的に療養所に収容された患者たちは、収容された施設で十分な医療体制を受けることができず、患者同士が面倒を見合い、泊まりこみの看病を行うほか、注射などの医療も患者が自ら行っていた。また、結婚の条件として男性の中には、子どもができないように断種手術をさせられたり、子どもができてしまった女性は、子どもを堕胎させられた。
01年にハンセン病患者に対する国の隔離政策は間違いであり、人権侵害であったかどうかの判決で、熊本地裁は国の責任を認めた。しかし、現在の日本のハンセン病療養所に入所しているほとんどの人は、ハンセン病が完治しているにもかかわらず、平均年齢は74歳を越え、また多くは顔面や手足に変形を残しているために、社会に出て生活するのはむずかしい状態だ。
もうひとたびハンセン病に対する正しい理解と苦渋の人生を歩まざるを得なかった元ハンセン病患者の生き方を通して「いのちの尊厳」を学ぶことが求められる。