来日中のドゥドゥ・ディエン国連人権委員会特別報告官は5日から11日まで東京や京都など各地を訪問、日本国内の外国人労働者や少数民族、被差別部落などの実態について調査した。調査結果について今秋の国連総会で中間報告し、差別が認定されれば日本政府へ是正勧告する方針。
ディエン氏は、北海道のアイヌ民族や大阪府の被差別部落、在日外国人に対する日本の差別状況を調べるため、国連人権高等弁務官事務所のミラノ・バレンティナ人権担当官らと12日まで来日している。
5日には、在日朝鮮人に対する立ち退き要求が問題になっている京都府宇治市伊勢田町のウトロ地区や、京都市左京区の京都朝鮮中高級学校を訪れた。毎日新聞によると、ディエン氏は町内会役員の同伴で地区内を巡り、「まさに差別の足跡。経済大国の日本で貧困や社会から排除された状態を見たのはショッキングだった」と述べた。国民年金制度が外国籍者を排除していた影響で、無年金のまま放置されている在日高齢者と障害者の問題についても説明を受けた。
同学校では、金允善(キムユンソン)校長が「学校と認められず補助金もないため運営は厳しい。父母の教育費負担も大変」と訴えた。学卒と認められないため、卒業しても資格面で大きなハンディを背負う。国立大の大学受験資格も、朝鮮学校は個人単位でしか認められていない等の報告もあった。ディエン氏は「歴史的に関係の深い隣国との問題で、日本のマイノリティ(少数派)がどんな状況にあるのか報告したい」とした。
11日には、ディエン氏は都内で記者会見した。アイヌ民族や朝鮮半島出身者らへの差別解消策として、日本政府に歴史教科書の改善を求めた。また、法務省入国管理局が不法滞在外国人の情報を電子メールで募っていることについて、「外国人を排斥する風土を助長するもので、即刻撤廃すべきだ」と述べた。教科書改善を求める理由としては、日本の差別が歴史や文化を背景としていると説明。「差別をなくす意識は幼少時から根づかせなくてはならない」として、政府に差別撲滅の意思を表明するよう求めた。