神奈川県児童福祉審議会社会環境部会は30日、残虐性が強く、青少年に悪影響を及ぼすとして、ゲームソフト1点を「有害図書」に指定するよう県に答申することを決めた。ゲームソフトの有害図書指定は初めてという。県知事は6月7日付で指定を告示する。有害図書は、18歳未満への販売や貸し出しが禁止され、一般の商品と分けて陳列することが義務付けられる。
今回のソフトは米国製で、ゲームの主人公が町の中で、棒や銃などの武器を用いて人を次々に殺していく内容。国内では2003年9月から今年4月までに約35万本が販売されたという。米国では2003年、少年2人による殺傷事件のきっかけになったとして、同国の販売元を相手に訴訟を起こしているという。
東京新聞(30日付)によると、審議では、県職員が操作して収録した映像が約10分間、スライド上に映し出された。主人公が棒で「標的」の人物を殴り続ける場面や、「一般市民」を自動車ではね飛ばす場面が次々と流れた。
審議会は、「殺人を自由に楽しむような内容。残虐性の助長に科学的な証明はないかもしれないが、多感な未成年が長時間遊べば助長される可能性はあり得る」などと判断した。部会長の上田滋・県少年補導員連絡協議会理事は「きちっとした判断を大人が示す必要がある」と総括し、即時答申を決めた。
これに対し、業界関係者は「表現の自由」や「営業の自由」が侵害されることを懸念している。
各紙によると、この点について上田部会長は審議終了後、報道陣の取材に「委員は(表現の自由などの重要性を)把握した上で、それよりも時代を担う若者たちのことを優先すべきだとの思いがあったと思う。無視したわけではないことを理解いただきたい」と述べた。限定的な上映時間についても「画面を見る限り、青少年が(正常な)判断をできなくなる状況があると感じとれた」と話した。
また「行政、青少年育成団体、業界がぜひ一緒になって、青少年のためになるような販売方法を前向きに考える必要があるのではないか」と語り、販売のあり方について協議の場を設けるべきだとの考えを示した。