北海道立羽幌(はぼろ)病院で昨年2月、医師が当時90歳の男性患者人工呼吸器を取り外し、死亡させたことを受けて北海道警察は27日、同医師を殺人容疑で書類送検した。読売新聞など各紙が同日報じた。
回復見込みのない患者の苦痛緩和などを目的に患者の死期を早める「安楽死」をめぐっては、筋弛緩(しかん)剤などを投与した医師が殺人容疑で逮捕された例はあるが、「消極的安楽死」といわれる延命措置の停止だけで立件されるのは初めて。
1995年東海大病院で発生した安楽死事件に関する裁判で、横浜地裁は「延命治療中止」の条件を?回復の見込みがなく、死期が迫っていること?治療行為の中止を求める患者の意思表示か、患者の意思を十分に推定できる家族の意思が認められること?「自然の死」を迎えさせる目的に沿った決定をすること――と定義した。
今回の事件で道警は、医師がこの条件を満たしていないと判断した。調べによると、患者は’04年2月14日食事をのどに詰まらせて道立病院に搬送され入院した。医師は翌日午前10時40分ごろ、この患者に取り付けられていた人工呼吸器のスイッチを止めた疑い。医師は家族の同意を得たと主張しており、道警の調べに対し「患者のため、家族のためにやった」と供述している。