カトリック教会の聖職者任命権を巡ってバチカン(ローマ教皇庁)と対立していた中国政府公認の中国天主教(カトリック)愛国会の議長、ミカエル・フー・ティーシャン司教(Michael Fu Tieshan)が死去したことが23日、わかった。76歳だった。フー司教はバチカンの権威を承認することを拒否し続け、聖職者の任命権を巡ってローマ教皇庁と対立してきた強硬派の一人。フー司教の死に関連し、中国カトリック教界では様々な物議が醸し出されている模様。「同司教の死が中国カトリック教会とバチカンの関係を正常化させることに繋がる可能性がある」という声もあり、今後の動向に注目が集まっている。
中国在住のバーナード・カベエラ司祭は、「フー司教が死去したことにより、北京では新しい司教が任命されることになる。バチカンに対する忠誠心があり、ローマ教皇庁との調和を目指す聖職者が新たな司教に任命される可能性があり、両者の対立した関係が改善に向かって動き出すことも考えられる」と語っている。またカベエラ司祭は、「彼の死により、中国とバチカンの痛ましい対立関係に終止符が打たれ、新しい対話の時代が開かれる兆しが見えた」と述べている。
一方、香港を拠点に活動しているフランシスコ会のステファン・チャン司祭は、「フー司教の死は宗教的な範囲を超えて国家的な問題に関わるものだ」と述べ、同司教の死が中国政府の今後の政策にも影響を与える可能性があることを示唆した。
中国天主教愛国会の副議長を務めるリュー・バイニアン司教は、「フー司教は生涯通じて国と教会を愛した人です。彼は教会の指導者として多くの人々から尊敬されていました」とフー司教を証ししている。。
リュー司教によると、フー司教は先週20日に北京市内の病院で死亡したという。死因は肺がんとされている。
フー司教は中国天主教愛国会の総議長であり、中国カトリック教会の司教会議において会長代理を務めていた。しかし、どちらの職務もローマ教皇庁によって正式に承認されたものではなく、バチカン側はフー司教の振る舞いを問題視していた。また、同司教は1979年に司教の職務についているが、そのときもローマ教皇の承認を受けなかった。
中国とバチカンの外交的な関係は、ローマ教皇庁が台湾を承認した1951年以来封鎖されている。以来、約500万人の信徒を抱える中国天主教愛国会はローマ教皇庁の権威を拒否し続けており、バチカンの承認なしに司教を任命しているということでローマ教皇庁の反感を買い続けている。しかし一方では、中国にはバチカンに忠誠心のあるカトリック信徒が約1000万人いると言われており、中国天主教愛国会とバチカンの関係改善が急がれている。