キリスト教精神の下に患者中心の診療と看護の実践を行う聖路加国際病院理事長の日野原重明氏(95)が9日、日本ユニセフ協会の大使に就任した。同協会の大使に任命されるのは98年のアグネス・チャン氏に続く2人目。就任記者発表会の場において日野原氏は、「野球で言えば『9回』です。普通なら勝負はほぼ決まっているはずですが、私はこの『9回』から、私の一番大切な人生が始まると思っています」と就任の喜びを伝えた。
会見の場において日野原氏は、「6年半前に『新老人の会』を旗揚げしました。この会は、シニアの人々が持っているポテンシャルを後世の人々に伝えてモデルを示していくこと、子どもたちに『いのち』というものを教えていくことを目的としています。子どもたちのいのちが損なわれないように私たちは世界中を見渡さなければなりません。そして、いろいろな意味でハンディキャップをもっている子ども達を救わなければなりません。5歳までに1000万人が命を落としているという恐るべき現実を変える必要があるのです」と述べ、子ども達のいのちを守ることと子ども達の未来を守るための平和をつくっていくことの重要性を訴えた。
さらに日野原氏は、「私の大使としての活動はとにかく子ども達のために可能な限り献身することであると思っています。私はいま95歳と6ヶ月になります。野球で言えば『9回』です。普通なら勝負はほぼ決まっているはずですが、私はこの『9回』から私の一番大切な人生が始まると思っています。9回を過ぎて延長15回くらいまで、ピッチングをやったり打撃をやったりということは、全て子ども達のためであると思っています。そのためには更に睡眠時間を削ってでも頑張りたいと思います」と今後の抱負を語った。
最後に日野原氏は、日本ユニセフ協会の大使として、「新老人の会の皆さんにも、日本の子どもたちにも、そして今日ここにお集まりのメディアの皆様にも、世界の子どもたちを守るユニセフのキャンペーンへのご参加をお願いしたいと思います」と呼びかけた。
日野原氏の会見後、アグネス・チャン氏がお祝いのメッセージを伝えた。アグネス氏は、「今まではひとりで活動してきましたがこれからはひとりではありません。「1+1=2」ではないのです。私たちの場合、「1+1」は100を超えてしまいます。本当に力強く思います。今までの100倍くらいの力で世界の子どもたちのことをみんなに知らせていけます。そんな嬉しさで、胸が一杯です」と、日野原氏と共に働ける喜びを伝えた。
一方、会見当日はテレビ番組の収録のため出席できなかったユニセフ親善大使の黒柳徹子さんからもお祝いのメッセージが届けられた。黒柳さんは、「ユニセフは子どものために働く所ですが、先生が持つ大きな愛や知識を世界の子どものためにお使い頂くことはすばらしいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。心から拍手をお送りいたします」と祝辞を述べている。
日本ユニセフ協会側は日野原氏を大使に任命した理由について、「聖路加国際病院の理事長をはじめ、国内外の医学会の会長・顧問等数々の要職を務められる日野原氏の活躍は、医学、医療の現場に止まらず、多方面にわたっています。長年に渡る全国での講演活動や多くの著作を通じ、医師としての立場・医療という領域を超え、いのちの大切さ、平和の尊さなどを次代を担う日本の子どもたちに訴え、その活動や発言は、多方面から支持を得ています。こうした日野原氏の精神と活動は、子どもの権利を実現しようとするユニセフの精神・目的と相通ずるものであると考え、この度、日本ユニセフ協会大使にご就任いただく運びとなりました」とコメントしている。