イスラム教徒数千人が中東、アジア、アフリカで金曜の祈祷会後、イスラム教預言者ムハンマド風刺漫画の抗議運動を行い、数都市で警察隊との衝突が発生した。キリスト教関係者からは、和解と忍耐をもってこの問題を受け止めるようにという呼びかけが続いている。
世界のほとんどのイスラム教の宗派は金曜日に何事もなく礼拝を行ったが、風刺漫画に対する信徒の怒りをおさめることが困難であることが伺える。
イスラム教学者で説教者であるユサフ・カラダウィ氏は、「私たちが先週金曜日を怒りの日と宣言したとき、私たちはこの怒りを道理にかなうように聡明な方法で表現したかった」とオマールビンカタブモスクでの金曜日の説教で述べた。カラダウィ氏はイスラム教徒からは穏健保守派として、西欧の批判家からは過激派として知られている。アルジャジーラ人気テレビ番組「シャリア(イスラム法)と人生」や彼のホームページ、"IslamOmlime"で有名である。
カラダウィ氏はカタール半島の主要英字新聞で、「私たちは何の理由もなく攻撃を受けた。私たちはアッラーと預言者の怒りを代表して表現する権利を有する。私たちは私たちの預言者が侮辱されたときに世界に対し黙っているわけにはいかない。しかし私たちは怒りを人殺しや襲撃を行うのではなく、正しい方法で表現しなければならない」と述べた。
この風刺漫画では預言者ムハンマドのターバンが爆弾の形をしており、昨年9月にデンマークで最初に発行されたときにはそれほど問題にはならなかった。しかし欧州メディアが表現の自由を名目に預言者ムハンマドの風刺漫画を再発行して以来、イスラム教徒の怒りは急激に増大した。
イスラム教徒はアッラーやイスラム教預言者を描くことはどのような形であれ神に対する冒涜であるとしている。
金曜日にヨルダン首都アンマンでは、イスラム聖職者アブダル・ラーマン・イブダ氏が説教で「他国の暴徒を真似る」様なことをしないよう呼びかけた後、イスラム教徒二千人による平和的なデモ行進が行われたという。
しかしながらエジプト北部のマハラ・エルカブラでは1万5千人もの群衆が過激なデモ行進を行い、治安維持隊が催涙ガスや高圧放水銃を発砲したという。その結果少なくとも20人が逮捕されたという(AP通信)。
パキスタン、マレーシア、バングラデシュ、インド、スリランカでも数千人規模のデモ行進が行われ、インドネシア、フィリピンでは比較的小さなデモ集会が行われたという。
一方で金曜日に世界6950万人のルター派信徒のうちの6600万人近くを代表するルーテル世界連盟(LWF)は風刺漫画発行に対し、世界各地で議論や抗議デモを引き起こしている人々と公正な和解を求めるために奉仕するよう強く呼びかけたという。
風刺漫画の発行も、その問題に対する暴力的な反応もどちらも非難する一方で、LWF総幹事のイシュマエル・ノコ牧師は、世俗的な権利と宗教的価値観の間における摩擦としてこの問題を巡る危機が誤って宣伝されないようにしなければならないと述べた。
金曜日に出された報告では、ノコ牧師は議論の焦点となっているこの風刺漫画は「イスラム教徒の感情を逆なでし、宗教的価値観を低める激しく攻撃的なものである」とし、世界中のイスラム教徒はイスラム教に対する侮辱、挑発に対し、「堂々と精力的に抗議する権利がある」とした。
またノコ牧師は表現の自由は世界的に法的に認められた権利であるが、この権利は道徳的原則に基づいてよくわきまえて責任感を持って行使しなければならないとし、一部のイスラム抗議デモ参加者が大規模な暴動に加わっていることは、政治的にも宗教的にも容赦できることではないと指摘した。
パレスチナルーテル教会司教モニブ・A・ヨウナン博士は、「すべての宗教的象徴に対する名誉損傷は憎しみの壁を築き上げ、暴力を助長するだけだ」と非難した。
2月9日の風刺漫画における声明で、ヨルダン福音ルーテル教会、ホーリー・ランドの長であるヨウナン博士は、他者を脅かすすべての暴力行為を「容認し得ないもの」として糾弾した。
これを受けてノコ牧師は、パレスチナのキリスト教徒とイスラム教徒が、法的な義務によるものではなく隣人を尊敬し思いやる心から、隣人として互いの信条や伝統に敬意を表しながら暮らしてきたことを真似るよう促したという。