世界の先駆的インターネット会社グーグル社が提供した中国向け検閲機能付き検索エンジン"Google.cn"について、人権ウォッチはこのような検索エンジンの提供に関して考え直すようにとグーグル社に呼びかけている。
グーグル株式会社が中国向け検閲機能付き検索エンジンを提供して以来、人権団体から政治宗教的自由の侵害行為に当たるとして批判の声が上がっている。ニューヨークに拠点を置く非営利団体中国ヒューマンライツ(HRIC)は、現在グーグル社に対し、「まだ企業としての判断を変えるのに遅くはない」と再考を促している。
HRICは"Google.cn"で検索するとどの位の数のサイトが検閲され除外されるのか調査するために、"Google.cn","Google.com.tw","Google.com(英語&中国語)"の4つのグーグル検索サイトの比較を行った。「中国における人権」、「中国共産党」、「死刑」というような検閲に引っかかる言葉を入れて検索した際、"Google.cn"を用いて検索すると他の検索エンジンと比べて多くのサイトが検索をかけても見つからなかったという。
2月2日のHRICによる声明では、「グーグル社は急増する中国人インターネットユーザ市場を手に入れるために中国政府の要求に応じた、マイクロソフトやヤフー社を含むIT企業の先導役を担う重要な会社の一つであるのに嘆かわしいことである」とグーグル社の決断に関して失意の念を表明した。
今までにヤフーは中国人ジャーナリストを投獄に導くような情報を中国政府に譲与し、マイクロソフトは別の中国人ジャーナリストのブログを検閲するというような仕方で中国政府に協調した。HRICはこのような2社の中国政府への協調性とグーグルの新検索エンジンの中国政府への協調性とを比較した。
これらの企業についてHIRCは、企業リーダーシップを取るよりむしろ、皆争ってどん底へ駆け抜ける競争に関わってしまったと評価した。つまり、これらの企業は中国政府に譲歩し、中国における情報アクセス、表現の自由の規模を縮小する道へと競って引導しているのだという。
検閲機能付き検索エンジンはまた宗教的自由の侵害行為にもなっている。検閲機能付き検索エンジンによって中国の多くの宗教信者は宗教的な情報源に接触することができなくなるかもしれないという。
中国援助協会議長のボブ・フー氏は、中国キリスト教徒はインターネットに精通している人が多いと指摘している。中国のインターネット人口1億人のうちの大多数はキリスト教徒であるという。
フー氏は「キリスト教徒は福音や教会のあり方について話し合うときにインターネットのチャットルームを使用している。この方法は中国の宣教において非常に影響力を増している」と述べた。
フー氏は中国検閲機能付き検索エンジンは「神」や「キリスト」などの宗教的用語が含まれたサイトも検閲されて削除されてしまうだろうと批判している。
米国国会における人権会議は2月15日に予定されており、グーグル、ヤフー、マイクロソフト社に対し中国政府のインターネット検閲政策への協力についての質疑を予定している。またヤフー、マイクロソフト社は、米国政府がこの問題に関する主導権を握るように促す声明文を発表したという。