スロバキアとバチカンでは、妊娠中絶や体外受精のような議論をかもす医療処置を受ける際にある程度の規制をかけるべきだという協定草案を欧州委員会に提出した。
バチカンとスロバキアによる提案によると、カトリック教会によって設立された病院で勤務する医療関係の職員は妊娠中絶手術や体外受精を施すことを断ることが許されるべきだという。というのもこのような処置を施すのは医師や看護士にとって信仰上の理由で良心の呵責に問われるからであるという。
そしてこの提案によるとEUは、特定の宗教団体には理念や信仰に反する特定の行為を行わない権利があるべきであるとして支持する一方で、すべての女性がどんな差別を受けることもなく特定の医療処置やカウンセルを受けることができる権利を有するべきだという基本的権利と相反しないようにすることが重要であるという見解を述べた。
EU委員会はさらに、このように特定の宗教に携わる医療関係者に中絶や体外受精処置を施すのを良心の呵責から拒否できる権利をあたえることによって、とりわけ医療過疎地域の女性にとってこのような医療処置に関する提供やカウンセリングを受けるのが難しくなってしまうのではないかという危険もある、とこの草案に慎重な姿勢を見せている。
一方でヴェネディクト16世は、ローマ法王の座に着いて以来東ヨーロッパ諸国によりおおきなバチカン王国の影響を与えたいという姿勢をはっきりと示している。
ローマ法王庁が公式に主権国家として登録されているために、もしバチカンとスロバキアによる協定草案が法律として認められれば国際協定として認められることになる。
この協定案に対するEUの懸念はイギリスの世俗主義者によっても同様に懸念されている。国立世俗社会団体のケイス・ポータス氏は「この良心の呵責による法案によってその他の人々の権利を剥奪することにならないようにしなければならないというEU側の意見に賛成する。この草案はある特定キリスト教徒のみを保護して他宗教の信者の信仰や無神論者を差別しているとも述べた。
このようなバチカンと他ヨーロッパ諸国間との取り決めは過去にも多く生じているが、今回のスロバキアとバチカンとで提出された協定草案ほど他に影響力を与えるものは今までにはなかったという。