祈りの家「日光オーリブの里」(栃木県日光市)でチャプレンを務める一戸満師が7日、早稲田大学大隈会館で行われたインターナショナルVIPクラブ早稲田支部の第15回例会で講演した。一戸師は、信者、未信者、あるいはあす受洗という人も含めた約20人を前に、「頑張れば幸せな人生を生きられるのだ」と信じて東大大学院を卒業したものの、一時は路上生活をし、完全に生きる希望を失った中で、どのようにして信仰を持つようになったかという自身の救いの証しを熱く語った。
一戸師は、「あなたがたは、以前は暗やみでしたが、今は、主にあって、光となりました。」(エペソ人への手紙5章8節)を講演の初めに読み上げ、「まさに私の人生はこの御言葉通りです。この御言葉が自分の人生の杖であり、道しるべです」と、信仰を持つ前の「暗やみ」のような人生から、イエスを救い主として迎えてからの「光」のような人生へ至るまでの自身の歩みを涙ながらに語った。
5人兄弟の末っ子として生まれた一戸師は、大学を卒業し5年ほど学習塾を経営したが、再び勉学の志を持つようになり大学院に入学する。父親の影響などで「人生を自分の思うように生きたい」、「頑張れば幸せな人生を生きられるのだ」と信じながら、大学院卒業後は自宅で翻訳の事務所を開き、家族4人で自身が理想とする人生を送ってきた。
しかし、やがて父親が亡くなり、相続財産をめぐる親族間の争いの醜さに言いようもない「怒り」を覚えたのをきっかけに、酒びたりの人生になってしまう。やがて家族も去り、すべての財産を売り払って、大学時代の友人のところに身を寄せながら生きる希望を持てずに職を転々とする生活を送った。一戸師は、当時はまるで「糸の切れた凧のような生活」だったと、全く希望がなく、孤独でさまよっていた過去を振り返った。
失業して東京に戻ったが、全財産ともいえるカバン2つを盗まれてしまい公園でのベンチ暮らしが始まる。ホームレスの生活では日々体が衰弱し、「何もすることがなく、誰も自分を必要としない。早く死にたい」と常に自殺のことばかり考えたという。だが、ホームレス生活を初めて約3ヶ月経ったころ、公園で行われていた教会の集まりに参加したのをきっかけに、ホームレスを対象とした聖書学校に参加することになった。
教会でのメッセージを聞きながら同師は、「メッセージの一声一声が、昔の思いを一つひとつ壊していき、あたたかい気持ちになり、涙が出てきた」「これからは、自分の力で生きるのではなく、その方についていけばよいのだと思うと、本当に楽になった」とその感動を語った。
「もしだまされていても結構です。イエス様どうか私を生まれ変わらせてください」と夜明けまで祈ったという。
その後、一戸師は教会からの援助により神学校で学び、教会での伝道師の経験を経て、現在はキリスト教団体が多く利用する宿泊施設「日光オリーブの里」でチャプレンを務めている。
一戸師は、「神さまは不思議な方で、自分もわからない方法で導いてくださる」と自身が信仰に至るまでの様々な過程を振り返った。「今からわくわくしながら、これからの人生を楽しみに待ってください」と語り、すべての人々が不思議な神の導きに期待することを願った。