昨年末のNHK紅白歌合戦で、テノール歌手の秋川雅史さん(39)が披露した楽曲「千の風になって」のヒットに連動し、秋川さんよりも2年前の04年9月に発売していた新垣勉さん(54)の同楽曲のシングルが、今大きな注目を集めている。27日付けのYahoo!ミュージックランキングで総合6位、26日には2位まで浮上した。
「千の風になって」は、作者不詳の英語詩「ア・サウザンド・ウィンズ」が基になっている。この英語詩を01年に芥川賞作家の新井満さんが翻訳し、自ら作曲・歌唱して録音した。新井さんはこの楽曲を「千の風になって」と題して03年11月にCD化。その後、同楽曲を偶然耳にした新垣さんが「是非自分も歌いたい」と熱望し、04年9月にシングルをリリースした。
昨年末まではこの楽曲が世間で大きな注目を集めることはなかった。しかし、圧倒的な歌唱力と端整な容姿で現在人気沸騰中のテノール歌手秋川雅史さんが昨年末のNHK紅白歌合戦で披露したことで大ヒット。秋川版の「千の風になって」は1月22日付けのオリコン週間ランキングで首位を獲得した。それに伴い新垣版にも注目が集まり、レコード会社に追加注文が殺到しているという。ダウンロード版も人気を集め、27日付けのYahoo!ダウンロードランキングで4位に位置づけている。
「盲目」「天涯孤独」というハンディキャップを持ちながら日本人離れした美しく明るい歌声を持つ新垣さんは沖縄県出身で現在54歳。52年にメキシコ系アメリカ人で当時沖縄米軍兵だった父と日本人の母との間に生まれた。しかし生後まもなく助産婦の過ちにより家畜を洗う劇薬を点眼され失明。さらに1歳の時に両親が離婚し、父が本国に帰り母が再婚したため母方の祖母に中学まで育てられた。中学2年の時に祖母を失って天涯孤独となり、自殺を考えたこともあるという。しかしある時ラジオから流れてきた賛美歌に感銘を受けて教会へ足を運ぶようになり、その後は牧師の道を目指した。1979年に西南学院大学神学部を卒業し、首里バプテスト教会の副牧師になった。
西南学院大学在学中にマリオ・デル・モナコを育てた名ヴォイス・トレーナーのA.バランドーニ氏に激励され、その後は本格的に歌手の道を目指した。35歳で武蔵野音楽大学声楽科に入学、同大学院を修了。現在は国内外でリサイタルを開く他、学校、教会、美術館、病院などで公演会を意欲的に行っている。作品にはシングル「千の風になって」(ビクターエンタテインメント)のほか、大ヒットしたアルバム「さとうきび畑」(アットマーク)や著書「ひとつのいのち、ささえることば」(マガジンハウス)などがある。