菅直人首相と高木義明文部科学相は6日付で文部科学省ホームページを通して、東日本大震災被災地に住む子どもたち、および全国の子どもたちに向けて「新学期を迎える皆さんへ」と題した異例のメッセージを発表した。
メッセージでは、「皆さん、入学、進級おめでとうございます。この4月、希望に満ちた春を迎えるはずでした。しかし、この春は、私たちにとって、とてもつらい春になってしまいました」と語られ、東日本大震災の惨事について言及された。
被災地の中高生に対して「直接被災をした皆さん。皆さんは十代のもっとも人間が成長する時期に、この大きな試練に立ち向かわなければならなくなりました。学校は、あらゆる面で、皆さんが、この逆境を乗り越えていくためのサポートをしていきます」と奨励、被災地以外の中高生に対しては「どうか、皆さんの学校にやってくる、避難してきた仲間たちを温かく迎えてあげてください。すぐ近くに、そういった友達がいなくても、遠く離れて不自由な生活をしている同世代の友達を、同じ仲間、友達だと思ってください。そして、被害を受けた仲間の声に耳を澄ましてください。この大震災を通じて、日本国と日本社会は、大きな変化を余儀なくされます。この大震災からどうやって国を立て直していくのか。自然と共生して生きてきたはずの日本社会が、その本来の姿を取り戻すためには何が必要なのか。(中略)東北が生んだ詩人宮沢賢治は、科学と宗教と芸術の力で、冷害・凶作の多かったこの東北地方の農民を、少しでも幸せにしようと考え、そのことに一生を捧げました。どうか、他人の意見もきちんと受け止めながら、自分で合理的な判断ができる冷静な知性を身に付けてください。しかしそれだけではなく、他人のために祈り涙する、温かい心も育んでください」と勧めた。
その後、作家宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』から「僕、もうあんな暗(やみ)の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう」という文章を引用し、「賢治の言う『ほんとうのさいわい』とは何でしょう。」と疑問を投げかけ、「それを皆さんが本当に真剣に考えてくれるなら、きっと皆さんは、どこまでもどこまでも、一緒に進んでいけるはずです。そしてその先には、もっともっと素晴らしい新しい日本の国の姿があるはずです。忘れないでください。一緒に進んでいくのは、決して日本人だけではありません。今回の東日本大震災では、世界中からたくさんの支援が寄せられています。また、この非常時にあっても秩序正しく、理性を失わない日本人の姿に、世界中が驚き賞賛の声を揚げました。私たちは、世界と共にいます。 原子力発電所の事故に対して、危険をかえりみずに立ち向かう消防士や自衛官、電力会社の人たちの姿。各地の被災地で、救命救急活動にあたった警察官や医療関係者、そして何より、本当に命がけで皆さんを守ってくれた学校の先生たちの姿を忘れないでください。そして、みなさんも、もっともっと身体を鍛え、判断力を養い、優しい心を育んで、他人のために働ける人になってください。日本の未来は、皆さんの双肩にかかっています。あなたたちのその笑顔、ひたむきな表情が、いま家族や地域の人々を支えようと懸命にがんばっている大人たちに、勇気と希望を与えています。私たちも、全力で、皆さんの支援に取り組みます。本当の幸せを求めて、一緒に歩んでいきましょう」とこれからの未来を担ってゆく子どもたちへ激励のメッセージを送った。
大震災を通して日本国、日本社会は大きな変化を余儀なくされていることはもとより、子どもたちに対し「他人のために祈り涙する、温かい心を育んでください」「優し心を育んで他人のために働ける人になってください」と政府首相・文部科学相が連名でメッセージを発することは異例の出来事である。これからの日本社会を築いていく子どもたちが、大震災を乗り越え、福音の心に根差した大きな変化が日本になされていくこと、またクリスチャンにとっては、キリスト教徒がそのような愛の実践の模範となり、「本当の幸せ」「勇気と希望」がイエスキリストにあることを示していけることが期待される。
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