日本キリスト教協議会(NCC)の特別委員会「チェルノブイリ災害問題プロジェクト」は19日、北陸電力・志賀原発一号機で99年の定期検査中に制御棒3つがはずれ、原子炉が一時臨界状態に達していたことが7年以上にわたって隠蔽され、15日にその事実が判明したことに対しての抗議文書(16日付け)を発表した。
NCCは文書で、北陸電力が事故の事実を運転日誌にも記入していないこと、また国への報告も怠り、7年以上の長期にわたって隠蔽し続けてきたことなどをあげ、今回の事件に対して「許し難い不正義」として強い抗議を示した。
また、問題が明らかになるまでにあまりにも時間がかかりすぎているとし、今回の問題が原子力発電所などの監視を行う経済産業省の原子力安全・保安院をはじめ国全体が隠蔽に関わっているような事態ではないかと、保安院や国に対しても非難を示した。さらに、第三者機関を交えての原子力事故の再発防止対策や完全な情報公開を要求した。
トラブルの報告漏れや、データの改ざん、事故の隠蔽が相次ぐ原子力発電に対しては、「人間だけでなく生とし生けるもの全ての命を奪うことにもつながり、地球の温暖化よりずっと危険で恐ろしいものです」と述べ、現在深刻化する地球温暖化問題よりも、原子力発電を取り巻く現在の体質により深刻な問題があるとして、原子力への依存割合の軽減と、原子力に頼らない持続可能な電力供給策の確立なども求めた。
99年6月18日当時、志賀原発第一号機(石川県志賀町、沸騰水型、出力54万キロワット)では定期検査が行われ、その際に核分裂を抑えるための制御棒1本の緊急挿入試験を行っていたが、操作手順を誤り3本が引き抜けてしまった。それにより、原子炉は15分にもわたって核分裂の続く危険な臨界状態に達していた。しかし、当時の発電所長ら幹部が協議して事実を運転日誌にも残さず、国などへも報告しないことを決め、事実は事故発生から7年以上も隠され続けてきた。
今回の隠蔽事件に対して、甘利明・経済産業大臣は「憤りすら感じる。今までのデータ改ざんとは質が違う。厳正に対処しなければならない」と述べ、また保安院の市村知也・原子力事故故障対策室長も「最近明らかになった東北電力や東京電力の事例よりも悪質な可能性がある」と述べ、今回の事件の悪質さが指摘されている。志賀原発は問題が判明した15日に保安院より運転停止の命令を受け、同日から運転が停止されている。