キリスト教の迫害監視団体「オープン・ドアーズ」は、パキスタンで先月、冒とく法違反で死刑を言い渡された女性アーシア・ビビさんに関心を寄せ、祈りの支援をするよう求めている。
同国中部パンジャブ州の村に住むビビさんは昨年6月、「キリスト教徒がくんだ水は飲めない」などと言われたことが原因でイスラム教徒の女性と口論となった。その出来事の直後は何も起きなかったが、数日後、数人のイスラム教徒がビビさんを連れ去り、冒とく法違反で訴え出た。ビビさんはそれ以降約1年半の間拘留され、先月8日に死刑を言い渡された。
米オープン・ドアーズのカール・メラー会長は6日、ビビさんのために世界中のクリスチャンが祈り、抗議の声を上げるべきだと呼び掛ける声明を発表。「我々はパキスタンのクリスチャンを支援し続ける。彼らの声を代弁して抗議の声を上げることで、また霊的方法によって、想像できない圧迫を日々受けている厳しい迫害に直面している彼らを支援し続ける」と語った。
地元のラホール高等裁判所は、7日の時点ではまだビビさんの控訴審の日取りを明らかにしていない。アースィフ・アリー・ザルダーリー大統領がビビさんを恩赦することへの期待が高まっていたが、裁判所は先週、係争中の事件について政府が恩赦を出して介入するのは違法だと判断した。
ビビさんが住む村では、ビビさんの家族ともう一家族だけがクリスチャン。しかし、ビビさんの逮捕後には一家族が村を立ち去ったため、現在村でクリスチャンであるのはビビさんの家族だけだ。
メラー氏は、同国内のクリスチャンや他の宗教マイノリティを圧迫する今回のような事件が再び起きないよう、パキスタン政府に同法の撤廃を求めている。
「問題はそもそも、冒とく法が存在することだ」「ビビさんと同じような被害に遭った人はここ数年でもたくさんいる。彼らの主張を聞かずに1年半も拘留することができること自体、基本的人権や司法を馬鹿にしている」と指摘した。
「クリスチャンまた国際社会は、同法撤廃のためにパキスタン政府に圧力をかけ続けるべきだ。イスラム教強硬派に屈服してはいけない」とメラー氏は呼び掛けている。パキスタンでは事件を受け、強硬派は同法改正に反対するデモを行い、改正した場合は全国規模の抗議運動を行うなどと政府に圧力をかけている。
冒とく法は、1986年に独裁者ジアウル・ハク大統領が制定して以来、他宗教の信者に対する迫害や暴力を合法的に行う根拠となっている。ムハンマドへの冒とくに対する罰則は死刑か終身刑のみとなっているが、一審で死刑を言い渡されても多くは上級審で覆され、過去に死刑が執行されたことはない。
しかし、イタリアに拠点を置くキリスト教系メディア「アジア・ニュース」によると、1990年から2010年までの20年間で死刑判決を受けた人の内46人は、司法上の罰則意外のことで殺害されているという。46人の内28人はクリスチャンで、拘留中に死んでいるのが発見されるなど、死因がはっきりしないケースがあるという。