【CJC=東京】中国政府公認のカトリック教会『中国天主教愛国会』は11月20日、河北省承徳の司教に郭金才神父(同会副秘書長)を正式任命した。同氏は全国人民代表大会(全人代=国会)の代表でもある。式典が行われたピンカン教会周辺では、多数の警官が動員され、警備に当たった。
バチカンは18日、中国当局が聖職者に対し、任命式典への出席を「強制」しているとして、中国を非難する異例の声明を発表していた。20日の式典には、バチカンの承認を得ている司教8人が式典に参加した。その中のモンシニョール・ジェイ・ジュンミン(遼寧省)、リ・リャングイ(河北省滄州)、ファン・シンマオ(河北省衡水)の3人は出席のため、現職を引退させられた、とカトリック専門アジア・ニュースが中国教会筋の情報として伝えている。
中国政府は、キリスト教会へ外国の関与、支配を認めず、「自主、自立、自伝」の独自運営原則を受け入れた教会を公認している。1951年の対バチカン(ローマ教皇庁)断交を経て、中国のカトリック教会は愛国会と、教皇に忠誠を誓う非公認の「地下教会」に分裂している。
カトリック教会では、司教は教皇だけが任命権を持つ。バチカンは2006年、独自任命があった時から非公式に協議を進め、中国側が提示した複数候補の中からバチカンが承認した形で司教任命を認めている、とされてきた。07年には中国が独自に司教を選出後、バチカン側が黙認する形になった例があるという。
今回、バチカンは承認しておらず、任命を強行すれば中国とバチカンの関係改善の動きが損なわれると事前に警告していた。それを無視しての任命に、バチカンは不法だと表明、反発している。バチカンが郭氏を承認しなかったのは、同氏が全人代代表であり、政府の影響を強く受けることになる、との懸念もあったようだ。
愛国会の劉柏年副主席は、2年前にバチカンに決定を伝えたが回答が無かったと言う。同氏は「もう待てない。中国とバチカンの関係が損なわれたとしても、我々の問題ではない」として、「教皇は中国を愛していると信じる。一握りのバチカンの人々が関係改善を阻んでいるのだ」と言う。同氏はさらに「司教の出席は自発的なものだ。カトリック教会の教区は司教なしではやって行けないし、福音を伝えることが出来ない。中国で福音を広めることに政治的な妨害は許されない」と語った。
アジア・ニュース編集長のベルナルド・セルヴェレラ神父は、中国政府が教会を管理下に置こうとして来たとし、今回の動きは中国の実態を示すものだ、と指摘している。
中国のカトリック信徒数は、公認教会が2000万人、地下教会が6000万人との推定もある。