『どんなことにもくよくよするな!』(イーグレープ出版)の著者、佐々木満男弁護士のコラムを連載します。ラジオ大阪で現在放送中の人気番組「ささきみつおのドント・ウォリー!」(放送時間:毎週日曜日朝9:30〜、インターネットhttp://vip-hour.jp/で24時間無料配信中)でこれまでに放送された内容を振り返ります。「ミスター・ドント・ウォリー」こと佐々木弁護士が、ユニークな視点から人生のさまざまな問題解決のヒントを語ります。今日はその第9回目です。
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「感謝日記を書く」
あなたは、「感謝日記」という言葉を聞いたことがありますか。今日を振り返ってみて、「うれしかったこと、感謝すべきこと」だけを書く日記のことです。
私の知人に、長年にわたって心から信頼し献身的に尽くしてきた相手の人から完全に裏切られてしまった人がいます。そのため彼は生活の基盤を失い、路頭に迷いました。人間に失望し、人生に絶望して、彼は3度も自殺未遂を繰り返しました。頻繁にパニック障害が生じたため、精神科に通って強い薬を飲んでいましたが、なかなか治りません。夢遊病者のように真夜中に大声で奇声を発して町をさまよい歩いていた時もありました。いつも死に場所を探していました。もう誰も信用できなくなっていたのです。
ある時、見るに見かねた友人が、「感謝日記を書いてみたらどうだい」と提案しました。
「えっ、感謝日記って一体なんだ?」
「夜寝る前に、今日一日を振り返って、うれしかったこと、感謝すべきことを思い出して、それだけを日記に書くんだよ。その日記を書きつづけるんだ」
「なにをばかなことを言っているんだ。こんなひどい状態にいるのに、うれしいことなんか一つもないよ。感謝すべきことなんかなにもないじゃないか!」その人は反論しました。
「うん、確かに君の状況はひどいよ。うれしいことや感謝することなんか一つもないと言う気持ちも分かるよ。でもさあ、落ちついて考えてみろよ。君は刑務所に入っているわけではないし、毎日自由に生活できるんだ。ガンになってお医者さんから、『もう二ヶ月の命です』と宣告されたわけじゃない。今は収入もなくて苦しいけど、仕事をすれば落ちつくんじゃないか。俺もかつて仕事で失敗して長年勤めた会社を首になったんだ。その時は、俺を首にした会社をうらんで、会社の門の前でガソリンかぶって焼身自殺してやろうと思ったほどだった。なんにもやる気が起きなくて、毎日酒を飲んで家でグチばかり言ってたんで、俺にあいそをつかした妻は子供をつれて実家に戻ってしまった。そのうち、パチンコや競馬にはまってさあ、自分の貯金を全部使い果たしてしまったんだよ。そんな時に友だちから、「感謝日記」を書くように言われたんだ。最初は半信半疑だったけれど、何にもやることがなかったから、退屈しのぎに書いてみたんだ。
・今日一日、なんとか生きることができたことを感謝する。
・友だちと合って「感謝日記」を書くように言われたことを感謝する
・良いお天気で、公園でゆっくり日なたぼっこができたことを感謝する。
こんな調子で日記を書いてみたら、少しずつ気分が良くなってきた。一週間くらい書きつづけているうちに、だんだん生きる意欲がわいてきたんだ。『よし、仕事を見つけて働くぞ!』と思ってハローワークに歩いていったら、そこでばったり高校の同級生にあってさあ。『やあ、やあ、久しぶりだね。こんなところで何してんだ。ちょっとお茶でも飲もうよ』ということで、喫茶店で一緒にコーヒーを飲みながら昔話に花を咲かせたんだ。話し込んでいるうちに、『お前うちの会社で働いてくれよ』と言われて彼が社長をしている会社で働くことになったんだ。彼の会社で社員が辞めたので、ちょうどハローワークに求人申込に行ってたとこだったんだよ。そして、まじめに働いたら、抜てきされて、社長の右腕として専務取締役になったんだ。前に働いていた会社よりもずっと地位も高いし、給料も全然いい。もちろん、妻子は実家から戻ってきたよ」
「へえー、そんなうまい話ってあるんかよ」と、私の知人はその日から「感謝日記」をつけ始めたんです。そうしたら次第に気持ちが落ちついてきて、運がよくなってきたんですね。
彼もまた、生きる意欲が湧いてきて、仕事をしたくなりました。新聞広告を見て、いくつかの会社に応募したら、一番いい会社に就職が決まりました。今では、パニック障害や自殺願望もうそのように消えてしまい、元気で働いています。そして、同じ職場の女性と結婚して、幸せに暮らしています。
聖書には、「いつも喜びなさい。たえず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい」と書かれています。そうです、どんなことにも感謝するんです。天気の良い日はすばらしいお天気に感謝する。雨の日には恵みの雨に感謝する。曇りの日には、落ちついて仕事ができることに感謝するんです。そうすれば、いつも喜んでいられます。いつも喜んでいると、幸運が向こうから次々にやってくるんですね。
あなたも今日から「感謝日記」を書いてみたらどうですか。きっと、あなたの重く沈んだ心が軽くなり、問題は次々に解決し、幸運が近づいてきますよ。
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佐々木満男(ささき・みつお):国際弁護士。宇宙開発、M&A、特許紛争、独禁法事件などなどさまざまな国際的ビジネスにかかわる法律問題に取り組む。また、顧問会社・顧問団体の役員を兼任する。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。